結論:第57回(令和7年度) 社会保険労務士試験 択一式 健康保険法 第8問(健康保険法(資格喪失後の継続給付・滞納処分・保険料率・給付制限・選定療養))で、ことのりは5記述のうち公式正答と一致したのは3記述(B・C・D)で、記述Aを誤って『正しい』と判定し、唯一の正解肢Eを『提供された条文だけでは正誤を判断できない』として取り切れず、公式正答(E)に到達できませんでした。AIが、一つの記述(A)を『時効が残っている期間は受けられる』と早合点して誤判定し、さらに唯一の正解肢(E)を『告示が必要で条文だけでは判断できない』と保留して、正答に届かなかった回です。うまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開します。

本記事は、AI法令検索「ことのり」(本番稼働中のサービスそのもの)に実際に検索を実行させた結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した検証記録です。試験問題および正答は、全国社会保険労務士会連合会 試験センターが公表する社会保険労務士試験の問題・正答から引用しています。本記事は特定の試験対策・法的助言を目的とするものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の条文や一次情報、必要に応じて専門家にご確認ください。

検証の方法

第8問は、健康保険法(資格喪失後の継続給付・滞納処分・保険料率・給付制限・選定療養)に関する5つの記述(A〜E)のうち「正しいものはどれか」を選ぶ問題です。方法はシリーズ共通で、各記述を1つずつ、「次の記述は、現行法令に照らして正しいですか、誤っていますか。根拠となる条文を挙げて判定してください」という形で本番稼働中のことのりにそのまま入力し、返ってきた判定を公表の正答と照合しました。プロンプトの工夫・再試行・人間による誘導はありません。

ことのりの判定結果:5記述中3記述が一致(2記述を取りこぼし)

記述ことのりの判定挙げた主な根拠条文公式正答との照合
選択肢A正しい健康保険法104条・健康保険法193条× 不一致
選択肢B誤り国民年金法109条の6・厚生年金保険法100条の6○ 一致
選択肢C誤り健康保険法160条○ 一致
選択肢D誤り健康保険法119条・健康保険法122条○ 一致
選択肢E判断保留健康保険法86条× 不一致

各記述の解説

選択肢A:ことのりの判定「正しい」(公式と不一致)

記述:被保険者が資格喪失後何らの手続をとることなく相当期間を経過したため、受給資格期間は満たしているが、資格喪失後の継続給付を受ける権利の一部が既に時効により消滅している場合、時効未完成の期間については同一の保険者から傷病手当金の給付を受けることができる。

根拠条文:健康保険法104条健康保険法193条
ことのりは『正しい』と判定しましたが、公式正答は『誤り』です。資格喪失後の継続給付(健保法104条)は、傷病手当金を『継続して』受給することが要件です。何らの手続もとらず相当期間を経過し、その間の給付を受ける権利が時効(2年・健保法193条)で消滅した場合は、給付が途切れたことで『継続して』の要件を満たさなくなり、行政解釈(昭和31年12月24日保文発第11283号等)では時効未完成の期間についても継続給付は受けられないと整理されています。ことのりは104条・193条には到達しましたが、『時効が残っている期間なら受けられる』と早合点して『正しい』と誤判定しました。この行政解釈は、厚生労働省の法令等データベースに収載された通達原文(昭和31年12月24日保文発第11283号)で確認できます。

選択肢B:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:日本年金機構は、保険料の滞納処分等を行う場合には、あらかじめ財務大臣の認可を受けるとともに、滞納処分等実施規程に従い、税務署職員に行わせなければならない。

根拠条文:国民年金法109条の6・厚生年金保険法100条の6
日本年金機構が滞納処分等を行う際は、あらかじめ厚生労働大臣の認可を受け、機構の徴収職員に行わせます(厚生年金保険法100条の6等)。記述の『財務大臣の認可』『税務署職員に行わせる』は認可権者・実施主体を取り違えており誤りです。ことのりも『認可権者と実施主体が法令と異なる』として『誤り』と正しく判定しました。

選択肢C:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:健康保険組合が管掌する健康保険の被保険者に関する一般保険料率は、1,000分の30から1,000分の130までの範囲内において決定する。健康保険組合が一般保険料率を変更しようとするときは、理事長は、社会保障審議会の議を経てその変更について厚生労働大臣の認可を受けなければならない。

根拠条文:健康保険法160条
一般保険料率の範囲(1,000分の30〜130)と厚生労働大臣の認可が必要な点は健保法160条のとおり正しいものの、変更にあたり『社会保障審議会の議を経て』という要件はありません。ことのりも『前半は正しいが、社会保障審議会の議を経るという部分が誤り』として、記述全体を『誤り』と正しく判定しました。

選択肢D:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:保険者は、被保険者又は被保険者であった者の被扶養者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、当該被扶養者に係る保険給付の全部又は一部を行わないことができる。療養に関する指示に従わないときとは、保険者又は療養担当者の療養の指揮に関する明白な意志表示があったにもかかわらず、これに従わない者(作為又は不作為の場合を含む。)等をいう。

根拠条文:健康保険法119条健康保険法122条
療養に関する指示に従わない場合の給付制限(健保法119条、被扶養者への準用は122条)では、制限できるのは保険給付の『一部』であって『全部又は一部』ではありません。ことのりも119条・122条を引き、制限範囲の点で『一部誤りを含む』として『誤り』と正しく判定しました。

選択肢E:ことのりの判定「判断保留」(公式と不一致)

記述:選定療養において、後発医薬品(ジェネリック医薬品)のある先発医薬品(長期収載品)の処方を希望する場合、後発医薬品のある先発医薬品の薬価から当該先発医薬品の後発医薬品の薬価を控除して得た価格に4分の1を乗じて得た価格を用いて診療報酬の算定方法の例により算定した点数に10円を乗じて得た額を支払わなければならない。なお、後発医薬品がいくつか存在する場合は、薬価が一番高い後発医薬品との価格差により計算する。

根拠条文:健康保険法86条
この記述は公式正答(正しい記述)です。令和6年10月1日施行の長期収載品の選定療養では、特別の料金は先発医薬品と後発医薬品の薬価差の4分の1相当とされ(本問の試験時点。令和8年6月からは2分の1相当に引き上げられています)、後発医薬品が複数あるときは薬価が最も高い後発医薬品との差で計算します(厚生労働省「長期収載品の選定療養について」)。これは保険外併用療養費(健保法86条)を受けた厚生労働大臣の告示・通知で定められています。ところがことのりは、計算式の根拠が条文本体ではなく告示・通知にあるため、『提供された条文だけでは正誤を判断できない』として判断を保留し、唯一の正解肢Eを取り切れませんでした。

この結果から言えること

  • ことのりは、滞納処分の認可権者・実施主体(B)、保険料率変更の手続(C)、給付制限の範囲(D)という3つの誤り記述を、いずれも根拠条文を挙げて正確に『誤り』と見抜きました。
  • 一方で記述A(資格喪失後の継続給付と時効)を『時効が残っている期間なら受けられる』と早合点して『正しい』と誤判定しました。実際は継続給付は『継続して』受給することが要件で(健保法104条)、給付が途切れると時効未完成の期間についても受けられない、という行政解釈があります。条文(104条・193条)には届いても、その先の解釈で逆の結論を出してしまいました。
  • 唯一の正解肢E(長期収載品の選定療養の計算式)は、根拠が条文本体ではなく厚生労働大臣の告示・通知にあるため、ことのりは『条文だけでは判断できない』として保留しました。告示・通知が根拠の論点は、条文検索型のAIが取りこぼしやすい領域です。
  • 教訓は明確です。AIの『正しい』は早合点のことがあり、AIの『判断できない(保留)』は正解の見落としのことがあります。どちらも鵜呑みにせず、必ず一次情報(e-Govの条文・厚生労働省の告示や通知)で確認してください。本記事は、うまくいった回だけでなく外した回も隠さず公開するシリーズ方針に沿うものです。

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よくある質問

AIが『正しい』と言ったら信じてよいですか?

いいえ。本検証の記述Aのように、根拠条文には到達しても、その先の解釈(継続給付の『継続して』要件)を読み違えて『正しい』と早合点することがあります。必ず根拠条文と行政解釈で確認してください。

AIが『条文だけでは判断できない』と言ったらどうすればよいですか?

本検証の記述Eのように、答えが厚生労働大臣の告示・通知にある論点では、条文本体だけを見るAIが正解を保留してしまうことがあります。『判断できない』は不正解の見落としである可能性があるため、告示・通知などの一次情報まで確認するのが安全です。

出典(一次情報)