個人事業主が所得税を正しく計算するうえで最初に押さえるべきは、「自分の収入がどの所得区分に入るか」と「何を必要経費として差し引けるか」の2点です。事業所得は総収入金額から必要経費を控除した金額で計算され、その範囲は所得税法第27条と同第37条に規定されています。
この記事を書いたきっかけは、ベトナムで7月から改正個人所得税法など多数の新規定が施行されるというニュースでした。海外の税制改正は現地取引をする事業者に直接影響しますが、同時に「自分の国の所得税ルール、そもそも正確に理解しているか?」を振り返るきっかけにもなります。そこで、日本の個人事業主が押さえておくべき所得区分と必要経費の範囲を、AI法令調査ツール「ことのり」で条文ベースに整理しました。
本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。税務は個別事情によって取扱いが大きく変わる分野です。特に家事関連費の按分、事業所得と雑所得の区分、事業専従者給与などは事案ごとに判断が必要になります。最終判断は必ず一次情報(e-Govの条文・国税庁タックスアンサー)と、税理士など専門家にご確認ください。
事業所得とは何か──「対価を得て継続的に行う事業」
所得税法第27条は、事業所得を「農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く)」と定義しています。事業所得の金額は、その年中の総収入金額から必要経費を控除した金額です。
ここで参照される「政令で定める事業」の具体的な範囲は、所得税法施行令第63条に列挙されています。
施行令第63条が列挙する事業の範囲
- 農業/林業及び狩猟業/漁業及び水産養殖業
- 鉱業(土石採取業を含む)/建設業/製造業
- 卸売業及び小売業(飲食店業及び料理店業を含む)
- 金融業及び保険業/不動産業
- 運輸通信業(倉庫業を含む)
- 医療保健業、著述業その他のサービス業
- 上記のほか、対価を得て継続的に行う事業
最後の「対価を得て継続的に行う事業」という包括規定によって、多様な個人事業主の活動が事業所得の対象になり得ます。
必要経費の基本ルール──第37条と「債務確定主義」
必要経費の中心規定は所得税法第37条第1項です。ここでは、必要経費に算入すべき金額として次の2つが示されています。
- 総収入金額に係る売上原価その他その総収入金額を得るため直接に要した費用の額
- その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額
ただし、償却費以外の費用で「その年において債務の確定しないもの」は除かれます。つまり、費用を計上するためには、その年内に債務が確定していることが原則として必要です。これがいわゆる「債務確定主義」です(国税庁タックスアンサー No.2210)。
必要経費に「ならない」ものは第45条で列挙されている
逆に、支払っていても必要経費に算入できないものは所得税法第45条にまとめられています。主なものは次のとおりです。
- 家事上の経費及びこれに関連する経費(家事関連費)で政令で定めるもの
- 所得税
- 国税に係る延滞税、加算税、過怠税
- 道府県民税及び市町村民税(住民税)
- 罰金及び科料、過料
- 政令で定める損害賠償金
- 独占禁止法・金融商品取引法等に基づく課徴金及び延滞金
- 刑法上の賄賂、不正競争防止法に規定する金銭その他の利益
- 隠蔽仮装行為に基づく売上原価・費用(帳簿等で取引が明らかである等の例外あり)
所得税や住民税を経費にできないのは基本ですが、「延滞税・加算税・罰金・課徴金」が経費にならない点は、ペナルティ的性質を持つ支出を経費で救済しないという税法の姿勢を示しています。
家事関連費の按分──「明らかに区分できる部分」だけ経費に
自宅兼事務所の家賃、電気代、通信費、自家用車のガソリン代など、事業とプライベートが混ざる支出を「家事関連費」といいます。原則として家事関連費は必要経費になりませんが、所得税法施行令第96条により、次の部分は必要経費にできます。
- 家事関連費の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合の、その部分に相当する経費
- 青色申告書を提出する居住者について、取引の記録等に基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分の金額
実務では、使用時間・使用面積・使用割合など客観的な基準で按分し、その根拠を残しておくことが求められます(タックスアンサー No.2210)。
家族への給与──事業専従者給与の特例(第57条)
配偶者や親族が事業を手伝う場合、その給与の取扱いには特例があります(所得税法第57条)。
青色申告の場合(青色事業専従者給与)
税務署長の承認を受けた「青色事業専従者」に対し、届出書に記載した方法・金額の範囲内で、労務の対価として相当と認められる金額を支払ったときは、その全額を必要経費に算入できます。事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
白色申告の場合(事業専従者控除)
白色申告者の場合は、事業専従者1人につき配偶者は86万円、その他の親族は50万円を必要経費とみなすことができます。ただし、事業所得等の金額を「事業専従者の数+1」で除した金額と比較して、いずれか低い金額が適用されます。
10万円未満の資産は一括で経費にできる(施行令第138条)
減価償却資産は通常、耐用年数にわたって費用化しますが、所得税法施行令第138条により、取得価額が10万円未満の減価償却資産、または使用可能期間が1年未満のものは、業務の用に供した年分の必要経費に算入できます。パソコン周辺機器や小型の備品などで頻繁に使う特例です。
帳簿の備付け・保存は白色申告者にも義務がある
所得税法第232条は、不動産所得・事業所得・山林所得を生ずべき業務を行う居住者に対し、帳簿を備え付けて総収入金額と必要経費に関する事項を記録し、帳簿や書類を保存する義務を課しています。この記帳・保存義務は青色申告者に限られず、白色申告者にも及びます。必要経費の根拠を残すことは、税務調査対応の観点でも重要です。
青色申告か白色申告か
青色申告は複式簿記による記帳などの手間がある一方で、青色申告特別控除、青色事業専従者給与の全額経費算入、純損失の繰越し・繰戻しなど、税制上の優遇を受けられます。事業規模・記帳体制と得られるメリットを比べたうえで選択することになります。
条文の原文も、その場で確認できます
「自分のこの経費、第37条と第45条のどちらの側?」といった疑問は、AI法令調査ツール「ことのり」で条文と出典リンク付きで確認できます。事業所得の定義、家事関連費、事業専従者給与など、関連条文をまとめて追えます。
所得税法と個人事業主をことのりで調べるよくある質問
Q1. 自宅の家賃や電気代は、事業の必要経費にできますか?
事業とプライベートの両方に関連する「家事関連費」は原則として必要経費になりませんが、所得税法施行令第96条により、主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分できる場合には、その部分を必要経費に算入できます。青色申告者は、取引の記録等に基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分についても算入可能です。実務では、使用面積・使用時間などの客観的な按分根拠を残しておくことが重要です。
Q2. 所得税や住民税、罰金は経費になりますか?
いずれも必要経費にはなりません。所得税法第45条は、所得税、道府県民税及び市町村民税(住民税)、国税に係る延滞税・加算税・過怠税、罰金及び科料・過料、独占禁止法等に基づく課徴金及び延滞金などを必要経費に算入しないと明記しています。
Q3. 家族に支払う給与を経費にするには、どうすればよいですか?
所得税法第57条により、青色申告者は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、そこに記載した方法・金額の範囲内で、労務の対価として相当と認められる金額を支払えば、その全額を必要経費にできます。白色申告者は、配偶者86万円・その他の親族50万円までを事業専従者控除として必要経費とみなせますが、事業所得等の金額を専従者の数+1で割った額との低い方が適用されます。
出典(一次情報)
- 🔗 所得税法 第27条(事業所得)
- 🔗 所得税法 第37条(必要経費)
- 🔗 所得税法 第45条(家事関連費等の必要経費不算入等)
- 🔗 所得税法 第57条(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)
- 🔗 所得税法 第232条(事業所得等を有する者の帳簿書類の備付け等)
- 🔗 所得税法施行令 第63条(事業の範囲)
- 🔗 所得税法施行令 第96条(家事関連費)
- 🔗 所得税法施行令 第138条(少額の減価償却資産の取得価額の必要経費算入)
- 🔗 国税庁 タックスアンサー No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)
- 🔗 国税庁 タックスアンサー No.2210 必要経費の知識
- 🔗 Google News: 7月施行の新規定、改正個人所得税法など多数(ベトナム)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。