結論:令和6年度 司法書士試験 午後の部 第15問(不動産登記法(申請の却下・取下げ))で、ことのりは5記述のうち公式正解と一致したのは4記述で、記述ア(印紙の再使用証明)を取りこぼしました。記述アを誤って『正しい』と判定した結果、ことのりはア・ウ・エを正しいと判断し、公式正解の組合せ「ウエ」に一意に絞り込めませんでした。本シリーズの「外した回」です。うまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開します。

本記事は、AI法令検索「ことのり」(本番稼働中のサービスそのもの)に実際に検索を実行させた結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した検証記録です。試験問題および正解は、法務省が公表する司法書士試験の問題・正解から引用しています。本記事は特定の試験対策・法的助言を目的とするものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の条文や一次情報、必要に応じて専門家にご確認ください。

検証の方法

第15問は、不動産登記法(申請の却下・取下げ)に関するアからオまでの5つの記述のうち「正しいものの組合せ」を選ぶ問題です。方法はシリーズ共通で、各記述を1つずつ、「次の記述は、現行法令に照らして正しいですか、誤っていますか。根拠となる条文を挙げて判定してください」という形で本番稼働中のことのりにそのまま入力し、返ってきた判定を法務省公表の正解と照合しました。プロンプトの工夫・再試行・人間による誘導はありません。

ことのりの判定結果:5記述中4記述が一致(記述アを取りこぼし)

記述ことのりの判定挙げた主な根拠条文公式正解との照合
記述ア正しい登録免許税法施行令32条× 不一致
記述イ誤り不動産登記規則39条1項○ 一致
記述ウ正しい不動産登記法25条13号○ 一致
記述エ正しい不動産登記規則38条3項○ 一致
記述オ誤り不動産登記法23条1項・法25条10号○ 一致

各記述の解説

記述ア:ことのりの判定「正しい」(公式と不一致)

記述:申請代理人が甲土地の所有権の移転の登記の申請を取り下げて、当該申請の際に納付した印紙の再使用証明を受けた場合には、当該申請代理人は、当該申請の申請人以外の者を申請人とする甲土地と同一の登記所の管轄区域内にある乙土地の所有権の移転の登記の申請のために、当該印紙を使用することはできない。

根拠条文:登録免許税法施行令32条
ことのりは『申請人が異なれば納税義務者も異なるため再使用できない』という実務上の一般論を組み立てて『正しい』と判定しましたが、公式正解は『誤り』です。再使用証明の手続を定める登録免許税法施行令32条(根拠は登録免許税法31条3項)には、再使用できる相手を元の申請人に限る旨の規定はありません。登記先例(昭和34年1月29日民事甲125号通達)は『再使用証明を受けた登記申請の申請人又はその代理人であった者が申請・代理申請する場合、同一登記所で他の登記申請に使用してさしつかえない』とし、さらに『甲の代理人Aが受けた再使用証明を、乙の代理人Aとして同一登記所で別の登記の代理申請に使用できる』としています。本記述はまさにこの場面で、申請代理人は申請人が異なる乙土地の登記にも当該印紙を使用できます。よって『使用することはできない』は誤り。ことのりは条文に限定がないことを自ら認めながら、誤った実務解釈で正反対の結論を出しました。

記述イ:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:法務大臣の定めるところにより電子情報処理組織を使用する方法により登記の申請をした場合において、当該申請を取り下げるときは、当該申請を取り下げる旨の情報を記載した書面を登記所に提出する方法によることができる。

根拠条文:不動産登記規則39条1項
電子申請の取下げは、書面ではなく不動産登記規則39条1項1号により電子情報処理組織を使用して取り下げる旨の情報を提供する方法によらなければなりません。よって『書面を提出する方法によることができる』は誤りで、ことのりも『誤り』と判定し、公式正解と一致しました。

記述ウ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)

記述:「承役地の所有者は承役地の浸冠水その他の影響について一切異議求償等を申立てない」旨の特約を申請情報として地役権の設定の登記を申請した場合には、当該申請は却下される。

根拠条文:不動産登記法25条13号
公序良俗に反し無効な特約であることが申請情報から明らかな場合、不動産登記令20条8号・法25条13号により申請は却下されます。ことのりは『正しい』と判定し、これが公式の正解肢の一つです。

記述エ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)

記述:書面申請の方法により登記の申請をした場合において、当該申請が却下されたときは、当該申請の申請書は還付されない。

根拠条文:不動産登記規則38条3項
不動産登記規則38条3項が却下時に還付するとしているのは『添付書面』であり、申請書そのものは還付の対象に含まれません。よって『申請書は還付されない』は正しく、ことのりも『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。

記述オ:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:外国に住所を有する登記義務者が登記識別情報を提供することができないために事前通知による手続を利用して登記の申請をする場合において、登記官が事前通知を発送した日から2週間内に当該登記義務者から申請の内容が真実である旨の申出がされなかったときは、当該申請は却下される。

根拠条文:不動産登記法23条1項法25条10号
外国に住所を有する登記義務者の場合、事前通知の申出期間は2週間ではなく4週間です(不動産登記規則70条8項ただし書)。よって『2週間内に申出がなければ却下される』とする記述は期間の点で誤りで、ことのりも『誤り』と判定し、公式正解と一致しました。

この結果から言えること

  • ことのりが外した記述アは、印紙の再使用証明を受けた印紙を、申請人を異にする同一登記所内の他の登記申請に使えるかという、条文ではなく登記先例(昭和34年民事甲125号通達等)で決まる論点でした。
  • ことのりは『再使用の範囲を定めた明文がない』ことを正しく認識しながら、『印紙は特定の納税義務者のためのものだから申請人が異なれば再使用できない』という、もっともらしいが誤った一般論を自分で組み立て、先例と正反対の『正しい』という結論に至りました。条文の不存在を自前の解釈で埋めにいったことが、外した原因です。
  • 教訓は明確です。明文がなく先例・通達で運用されている論点では、AIの“筋の通った説明”ほど危ないこと。判定はそのまま信じず、必ず一次情報(条文・登記先例)で裏を取ってください。本記事はうまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開するシリーズ方針に沿うものです。

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よくある質問

AIは条文に書いていないことも判定できますか?

条文に明文がない論点では、ことのりが一般論で推論して誤ることがあります。本検証でも、再使用証明の範囲という先例で運用される論点で、もっともらしい説明とともに公式と逆の結論を出しました。明文のない論点こそ、登記先例や専門家による最終確認が必要です。

司法書士試験の『組合せ問題』はどう採点したのですか?

アからオの各記述を1つずつことのりに判定させ、5つの正誤がすべて公式と一致して初めて正しい組合せに絞り込めます。本問はことのりが記述アを取りこぼし、ア・ウ・エを正しいと判断したため、公式の『ウエ』に一意特定できませんでした。

出典(一次情報)