結論:令和5年度 司法書士試験 午後の部 第26問(不動産登記法(添付書面の原本の還付))で、ことのりは5記述のうち公式正解と一致したのは4記述で、記述ア(住所を証する書面の原本還付)を取りこぼしました。ことのりは記述アを実務特例として『正しい』寄りに判定した結果、公式正解の組合せ「アオ」(=誤っている記述)に絞り込めませんでした。本シリーズの「外した回」です。うまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開します。

本記事は、AI法令検索「ことのり」(本番稼働中のサービスそのもの)に実際に検索を実行させた結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した検証記録です。試験問題および正解は、法務省が公表する司法書士試験の問題・正解から引用しています。本記事は特定の試験対策・法的助言を目的とするものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の条文や一次情報、必要に応じて専門家にご確認ください。

検証の方法

第26問は、不動産登記法(添付書面の原本の還付)に関するアからオまでの5つの記述のうち「誤っているものの組合せ」を選ぶ問題です。方法はシリーズ共通で、各記述を1つずつ、「次の記述は、現行法令に照らして正しいですか、誤っていますか。根拠となる条文を挙げて判定してください」という形で本番稼働中のことのりにそのまま入力し、返ってきた判定を法務省公表の正解と照合しました。プロンプトの工夫・再試行・人間による誘導はありません。

ことのりの判定結果:5記述中4記述が一致(記述アを取りこぼし)

記述ことのりの判定挙げた主な根拠条文公式正解との照合
記述ア誤り不動産登記規則55条2項× 不一致
記述イ正しい不動産登記規則55条1項○ 一致
記述ウ正しい不動産登記規則55条1項○ 一致
記述エ正しい不動産登記法107条1項○ 一致
記述オ誤り不動産登記規則55条3項○ 一致

各記述の解説

記述ア:ことのりの判定「誤り」(公式と不一致)

記述:相続を原因とする所有権移転登記の申請で、申請人の住所の記載のある相続関係説明図を添付したときは、申請人の住所を証する書面(住民票)の謄本の提供を要することなく、原本の還付を請求することができる。

根拠条文:不動産登記規則55条2項
ことのりは『相続関係説明図に住所の記載があれば実務特例として謄本の提供を要せず原本還付可能』と判定し、正しい寄りの結論を出しましたが、公式正解は『誤り』です。登記実務(不動産登記規則55条2項および登記先例)で、相続関係説明図により謄本の提出を省略できるのは戸籍謄本など『相続があったことを証する情報』に限られ、住所を証する書面(住民票の写し)については、原本還付の請求に際して原本と相違ない旨の記載のある謄本の提出が必要です。ことのりは戸籍謄本に関する特例を住民票にも及ぼしてしまいました。

記述イ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)

記述:売買による所有権移転登記の申請で、登記義務者が登記識別情報を提供できないため資格者代理人が作成した本人確認情報を添付したとき、本人確認情報に添付する資格者代理人であることを証する書面について原本還付を請求することができる。

根拠条文:不動産登記規則55条1項
資格者代理人であることを証する書面は『当該申請のためにのみ作成された書面』ではないため、不動産登記規則55条1項のただし書に該当せず、原本還付を請求できます。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。

記述ウ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)

記述:時効取得を原因とする所有権移転登記の申請で、登記権利者・登記義務者が作成した報告形式の登記原因証明情報を添付したときは、当該登記原因証明情報の原本還付を請求することはできない。

根拠条文:不動産登記規則55条1項
報告形式の登記原因証明情報は『当該申請のためにのみ作成された書面』に該当し、規則55条1項ただし書により原本還付の対象外です。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。

記述エ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)

記述:売買予約による所有権移転請求権の仮登記を、登記権利者が登記義務者の承諾書を添付して単独で申請したときは、承諾書に添付された登記義務者の印鑑証明書について原本還付を請求することはできない。

根拠条文:不動産登記法107条1項
不動産登記規則55条1項ただし書は同規則49条2項3号に規定する印鑑証明書を原本還付の対象外としています。仮登記の単独申請で添付する印鑑証明書もこれに該当し、原本還付を請求できません。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。

記述オ:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:申請人が原本還付を請求した場合、原本還付を請求できるものについて、登記官は、申請の受付後、直ちに原本の還付をしなければならない。

根拠条文:不動産登記規則55条3項
不動産登記規則55条3項は原本還付を『調査完了後』に行うと定めており、『受付後、直ちに』ではありません。ことのりは『誤り』と判定し、公式正解と一致しました。

この結果から言えること

  • ことのりが外した記述アは、相続関係説明図により謄本の提出を省略できる範囲という登記先例の限定を捉える問題でした。実務特例は『相続を証する書面(戸籍謄本等)』に限られ、『住所を証する書面(住民票)』には及ばないというピンポイントの限定です。
  • ことのりは特例の存在自体は正しく認識したものの、特例の対象範囲を条文・先例の趣旨より広く読み、住民票にも適用してしまいました。『相続関係説明図があれば戸籍謄本を還付できる』という有名な特例を、隣接する住民票の還付にも当てはめる誤解は、実務でも起きやすい混同です。
  • 教訓は明確です。特例の対象範囲は条文・登記先例の文言どおりに限定的に読み、隣接する類似書類には広げないこと。AIが『実務特例が確立している』と述べても、その特例が今の書類にも当てはまるかは、必ず一次情報で確認してください。

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司法書士試験(不動産登記法など)の条文知識を問う問題で同じ検証を進めています。うまくいった回だけを選んで載せることはせず、外した問題も隠さず解剖して公開します。

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よくある質問

AIは特例の適用範囲を正確に判断できますか?

本検証では、相続関係説明図による還付特例の対象範囲を、戸籍謄本から住民票にも広げて解釈してしまいました。特例は条文・登記先例で明確に限定されているため、AIの説明が『特例あり』と述べていても、その特例が今の書類に当てはまるかは条文で最終確認してください。

原本還付の請求はどのような場合に必要ですか?

登記申請に添付した書面(戸籍謄本・住民票・印鑑証明書等)は、他の手続にも使いたい場合が多いため、原本の返還を求めるのが原本還付の請求です。ただし当該申請のためにのみ作成された書面(報告形式の登記原因証明情報、委任状等)は還付対象外です。最終確認は不動産登記規則55条で行ってください。

出典(一次情報)