常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出と、従業員への周知が労働基準法第106条などにより義務付けられています。9月15日には法改正・裁判例トレンドと法的リスク予測の実務セミナーが開催予定で、法改正への継続的なキャッチアップと社内周知の重要性が改めて話題になっています。
そこで本記事では、中小企業でも避けて通れない「就業規則の作成・変更・周知義務」について、労働基準法と労働契約法の条文に沿って整理しました。作成・届出のルール、変更の際の意見聴取、周知方法の具体例、不利益変更を伴うときの合理性判断まで、実務で押さえるべきポイントが分かります。
就業規則とは何か
就業規則は、企業における労働時間、賃金、休日、服務規律など、労働条件や職場規律に関する具体的なルールを定めたものです。労働契約の内容を具体化し、労働者と使用者の双方に適用される基準となります(労働契約法第7条)。
労働基準法や労働契約法は、就業規則の作成・変更・周知について使用者に明確な義務を課しており、これらを遵守することが法令違反リスクを避け、労使間の信頼関係を築く出発点となります。
作成・届出の義務(労働基準法第89条・第90条)
常時10人以上の事業場で作成・届出が必要
常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。法改正により労働条件や職場環境に関する法令が変更された場合、就業規則がその内容に適合しているかを確認し、必要に応じて見直すことが求められます。就業規則が法令に反する部分については、その法令が優先されるためです(労働契約法第13条)。
作成・変更時は労働者代表の意見聴取が必要
就業規則の作成または変更にあたっては、使用者は、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければなりません(労働基準法第90条第1項)。この意見を記した書面は、就業規則の届出時に添付する必要があります(同条第2項)。
周知義務(労働基準法第106条)
周知は「常時確認できる状態」に置くことが要点
使用者は、作成または変更した就業規則を労働者に周知させる法的義務を負います(労働基準法第106条第1項)。この周知義務は、就業規則が労働契約の内容となるための重要な要件であり、周知が適切に行われていない場合、就業規則の効力が労働者に及ばない可能性があります。
労働基準法施行規則第52条の2が定める周知方法
労働基準法施行規則第52条の2は、周知方法として次の3つを定めています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
- 書面を労働者に交付すること。
- 使用者の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体をもって調製するファイルに記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。
厚生労働省のQ&Aでは、労働基準法に定める周知方法以外であっても、労働者が就業規則の内容を「常時確認できる状態」に置かれていれば効力は生じるとの解釈が示されていますが、法に定められた方法を確実に遵守することが最も安全です。
不利益変更を伴う場合の合理性判断
原則は労働者との合意(労働契約法第9条)
就業規則の変更が労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更する場合、原則として使用者は労働者と合意することなく変更することはできません(労働契約法第9条)。
例外としての合理性要件(労働契約法第10条)
労働契約法第10条は、次の要件を満たす場合に限り、労働者の合意がなくても変更後の就業規則が労働契約の内容となることを認めています。
- 変更後の就業規則を労働者に周知させること。
- 就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること。
この「合理性」は、変更の必要性、変更後の内容の相当性、代償措置の有無、労働組合等との交渉状況などが総合的に考慮されます。労働者の不利益が大きい変更の場合には、より厳格な判断がなされる傾向があるとされます。
就業規則が適用されない場合
就業規則は、法令または労働協約に反する内容を含む場合、その反する部分については無効となります(労働契約法第13条)。就業規則は法令や労働協約に劣後するものであり、これらに違反する規定は適用されません。
また、労働者と使用者が個別の労働契約において就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた場合、原則としてその個別合意が優先されます(労働契約法第7条ただし書き、同第10条ただし書き)。ただし、労働契約法第12条に該当する場合を除きます。
中小企業のための実務チェックポイント
法改正情報の継続的なキャッチアップ
厚生労働省のウェブサイトや労働基準関係リーフレット、社会保険労務士や弁護士など専門家からの情報提供サービスを活用し、労働関係法令の改正動向を継続的に把握することが重要です。2024年4月からの労働条件明示ルールの改正など、就業規則の周知にも関連する見直しが行われています。
見直し・届出プロセスの確立
法改正内容と自社の就業規則との整合性を定期的に確認し、変更が必要な場合は労働基準法第90条に基づく意見聴取と、所轄の労働基準監督署への届出を確実に行います。
周知方法の選択と徹底
労働基準法施行規則第52条の2が定める方法から自社の実情に合ったものを選び、複数方法の併用で周知の確実性を高めるのが有効です。電子化して社内ポータル等に置く場合は、労働者がいつでもアクセスできる環境と利用方法の周知をセットにします。
条文の原文も、その場で確認できます
「ことのり」なら、就業規則の作成・変更・周知に関わる条文(労働基準法第89条・第90条・第106条、労働契約法第9条・第10条など)を、e-Govの原文リンク付きでまとめて確認できます。法改正のたびに条文を追い直す時間を短縮できます。
就業規則の義務をことのりで調べるよくある質問
就業規則を作成・届出しなければならないのは、何人以上の事業場ですか?
労働基準法第89条により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出る義務があります。作成・変更にあたっては、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聴き、その意見書を届出時に添付する必要があります(労働基準法第90条)。
就業規則の周知方法にはどのようなものがありますか?
労働基準法施行規則第52条の2では、(1)常時各作業場の見やすい場所への掲示または備え付け、(2)書面の交付、(3)電子計算機のファイル等に記録し各作業場で常時確認できる機器を設置する方法、の3つが定められています。労働者が「常時確認できる状態」に置くことが要点で、複数の方法を併用すると確実性が高まります。
就業規則で労働条件を不利益に変更するには何が必要ですか?
原則として、使用者は労働者と合意することなく不利益変更をすることはできません(労働契約法第9条)。例外として労働契約法第10条は、変更後の就業規則の周知と、労働者の受ける不利益の程度・変更の必要性・内容の相当性・労働組合等との交渉状況などに照らして合理的であることを要件としています。個別事情によって判断が異なるため、社会保険労務士や弁護士など専門家への相談が推奨されます。
出典(一次情報)
- 🔗 労働基準法 第106条(法令等の周知義務)|e-Gov法令検索
- 🔗 労働基準法 第90条(作成の手続)|e-Gov法令検索
- 🔗 労働基準法施行規則 第52条の2(周知の方法)|e-Gov法令検索
- 🔗 労働契約法 第7条|e-Gov法令検索
- 🔗 労働契約法 第9条(就業規則による労働契約の内容の変更)|e-Gov法令検索
- 🔗 労働契約法 第10条|e-Gov法令検索
- 🔗 労働契約法 第13条(法令及び労働協約と就業規則との関係)|e-Gov法令検索
- 🔗 就業規則の作成・変更・届出の義務(第89条、第90条、第92条)|栃木労働局
- 🔗 就業規則の作成・変更・届出|高知労働局
- 🔗 労基法106条の周知方法以外の手続でも効力があるか|スタートアップ労働条件(厚生労働省)
- 🔗 就業規則の変更はどのように行えばよいか|スタートアップ労働条件(厚生労働省)
- 🔗 2024年4月から労働条件明示のルールが変わります|厚生労働省
- 🔗 労働基準関係リーフレット|厚生労働省
- 🔗 9月15日開催 法改正・裁判例トレンドと、法務部門における法的リスク予測の実務セミナー|Google News
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。