結論から言えば、雇用保険料は「被保険者(労働者)」と「事業主」がそれぞれ負担し、事業主は毎年、労働保険料の申告・納付(実務上の「年度更新」)を行う義務を負います。そして、労働者を雇用する事業は、事業が開始された日に自動的に雇用保険の保険関係が成立します。届出をして初めて適用されるのではなく、先に関係が成立しているという順番です。
この記事を書いたきっかけは、雇用保険改正による雇用保険料負担~利益に与える財務への影響~という解説記事です。雇用保険制度の改正を取り上げ、事業主が負担する雇用保険料が企業の財務・利益にどう影響するかを論じたもので、労働保険料の負担区分や算定の考え方が論点として示されていました。雇用保険料の負担は、従業員を1人でも雇う中小企業・個人事業主すべてに関わる恒常的な義務です。だからこそ「どの法令の、どの条文が根拠なのか」を押さえておく価値があると考え、関連する法令を実際に調べました。この記事では、適用事業の範囲・被保険者の範囲・加入手続・保険料の負担区分・申告納付の義務について、雇用保険法と労働保険徴収法の条文を根拠に整理します。
本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。雇用保険・労働保険の分野は、保険料率が年度や事業の種類によって変わり、被保険者資格の判断も個々の労働条件によって異なります。本記事は条文の構造を把握するための整理であり、個別の事業所における資格の有無や保険料額の判断には用いないでください。最終判断は一次情報と専門家に確認してください。
1. 雇用保険が適用される事業とは
雇用保険法では、適用される事業の範囲が非常にシンプルに定義されています。雇用保険法第5条は「この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする」と定めています。業種や規模による限定はなく、労働者を雇用していること自体が適用事業の要件になっています。
そして、適用事業についての保険関係の成立・消滅は、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律」(以下「徴収法」)の定めるところによるとされています(雇用保険法第5条第2項)。
保険関係は「事業が開始された日」に成立する
その徴収法側の規定が、徴収法第4条です。「雇用保険法第五条第一項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき雇用保険に係る保険関係が成立する」と規定しています。
ここは実務上の理解で混乱しやすいところです。手続きを済ませたから適用される、という構造ではありません。事業を開始し労働者を雇用した時点で、法律上すでに雇用保険の適用事業になっている。届出はその事実を行政に知らせる手続きという位置づけになります。
2. 被保険者の範囲はどこに書かれているか
「どういう働き方なら雇用保険に入るのか」は、実務で最も問い合わせが多い論点でしょう。ただ、条文の構造を確認すると、少し意外な事実が見えてきます。
雇用保険法第7条は、事業主がその雇用する労働者に関し、被保険者となったことなどを厚生労働大臣に届け出なければならないと定めています。届出義務の規定です。
一方で、今回の調査結果によれば、雇用保険法およびその施行規則には、被保険者となるための具体的な要件(週の所定労働時間、雇用見込み期間など)に関する明文の定義規定は存在しません。では何が判断基準になるのか。厚生労働省の通達やガイドライン等により、週の所定労働時間や雇用見込みに関する具体的な基準が示されており、これらが被保険者資格の判断基準となっています(雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省)。一般的には、週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ31日以上の雇用見込みがある労働者が被保険者となります。
つまり、この論点は「条文を読めば答えが出る」タイプではなく、通達・行政解釈を併せて確認する必要がある領域だということです。個別のケースでは管轄のハローワークに確認するのが確実です。
3. 事業主の加入手続:資格取得届の提出
労働者が被保険者となった場合、事業主は厚生労働省令で定めるところにより、その事実を厚生労働大臣に届け出る義務があります(雇用保険法第7条)。
具体的な手続きを定めているのが雇用保険法施行規則第6条です。事業主は、労働者が被保険者となった事実のあった日の属する月の翌月10日までに、「雇用保険被保険者資格取得届」を、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければなりません。
届出に記載・添付するもの
同条によれば、この届出には被保険者の氏名、個人番号、性別、生年月日、一週間の所定労働時間などが記載されます。また、初めて資格取得届を提出する場合や、期限を超えて提出する場合などには、労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳などの証明書類を添付する必要があるとされています。
期限を過ぎてからの提出では添付書類が増える、という構造になっている点は押さえておくとよいでしょう。
特定法人は電子申請が原則
さらに同条では、特定法人については、電子情報処理組織(電子申請)による提出が原則とされています(雇用保険法施行規則第6条第9項)。行政手続のデジタル化が条文レベルで組み込まれている例といえます。
4. 保険料の負担区分:誰がいくら負担するのか
冒頭のニュースが扱っていた「事業主の負担」の根拠を、条文で追ってみます。
まず入口として、雇用保険法第68条が「雇用保険事業に要する費用に充てるため政府が徴収する保険料については、徴収法の定めるところによる」と定めています。保険料のルール自体は徴収法に置かれている構造です。
負担区分の本体は徴収法第31条
その負担区分を定めているのが徴収法第31条です。原則として、雇用保険料は被保険者と事業主がそれぞれ負担します。
条文上の構成はやや込み入っています。被保険者は、一般保険料の額のうち雇用保険率に応ずる部分の額から、二事業率(雇用安定事業及び能力開発事業に要する費用に対応する率)を乗じて得た額を減じた額の、二分の一を負担します。一方、事業主は、当該事業に係る労働保険料の額のうち、被保険者の負担すべき額を控除した残りの額を負担します。
要するに、雇用安定事業・能力開発事業に対応する部分(二事業分)は労働者の負担から除かれ、残りを労使で半分ずつ、という形です。結果として事業主の負担が被保険者より重くなる構造が、この条文から導かれます。
保険料率の構成
徴収法第12条によれば、一般保険料に係る保険料率は、労災保険率と雇用保険率を加えた率、または雇用保険率のみの率として定められます。そして雇用保険率は、失業等給付費等充当徴収保険率・育児休業給付費充当徴収保険率・二事業費充当徴収保険率の合計として構成されます。
集められた保険料は、失業等給付、育児休業給付、雇用安定事業、能力開発事業などの費用に充てられます(雇用保険法第68条)。負担区分の計算で「二事業率」が登場するのは、この使途の区分と対応しているわけです。
なお、雇用保険率は事業の種類によって異なる場合があるため、自社に適用される率の確認は個別に行う必要があります。具体的な率の数値は今回の調査結果に含まれていないため、厚生労働省の公表資料でご確認ください。
5. 労働保険料の申告納付(年度更新)
実務で「年度更新」と呼ばれている手続きは、法令上は労働保険料の申告納付手続きを指します。
事業主は、労働保険料(雇用保険料と労災保険料の総称)について、概算保険料と確定保険料を申告し、納付する義務があります(労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第38条)。
提出先と経由先
同条は、概算保険料申告書、増加概算保険料申告書、および確定保険料申告書を、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならないと規定しています。これらの申告書の提出は、日本銀行、年金事務所、所轄労働基準監督署長、または所轄公共職業安定所長を経由して行うことができるとされています。
納付については、日本銀行または都道府県労働局労働保険特別会計収入官吏、もしくは労働基準監督署労働保険特別会計収入官吏に行うこととされています(同条)。
時期
この手続きは、毎年6月1日から7月10日までの間に行われることが一般的であり、前年度の確定保険料の精算と、新年度の概算保険料の申告・納付を同時に行います(労働保険料の申告・納付|厚生労働省)。
前年度の賃金総額に基づき確定保険料を算出し、新年度分を見込みで前払いする。この「精算と前払いを同時に行う」構造が、年度更新の実務上の中身です。
6. 実務で気をつけたいポイント
今回の調査結果では、運用上の課題として次の点が整理されていました。
被保険者資格の判断が複雑化している
労働者の雇用形態が多様化する中で、被保険者要件の判断は複雑になっています。短時間労働者、高齢者、学生アルバイトなど、個々の労働者について週の所定労働時間や雇用見込み期間を正確に把握し、資格の有無を判断することが重要です。前述のとおり明文の定義規定がない領域なので、通達・ガイドラインの確認が欠かせません。
資格取得届の遅延・記載不備のリスク
被保険者資格取得届の提出遅延や記載不備は、労働者の失業給付受給に影響を及ぼすだけでなく、事業主に対する行政指導や追徴金発生の原因となる可能性があります。翌月10日という期限を、入社手続きのルーチンに組み込んでおくのが現実的でしょう。
適用率の確認と年度更新の期限管理
保険料の計算においては、雇用保険率が事業の種類によって異なる場合があるため、正確な適用率の確認が必要です。また、年度更新は前年度の賃金総額に基づく重要な手続きであり、期限内の正確な実施が求められます。
7. 今後の動き
調査結果では、制度の方向性として2点が挙げられていました。
ひとつは電子申請のさらなる推進です。雇用保険法施行規則第6条第9項に特定法人における電子申請の原則化が規定されているように、行政手続きのデジタル化は、事業主の事務負担軽減と行政の効率化の両方に寄与します。
もうひとつは多様な働き方への対応です。フリーランスやギグワーカーといった、従来の雇用関係に当てはまらない働き方が増加する中で、これらの働き手をどのように雇用保険制度の枠組みに取り込むか、あるいは新たなセーフティネットを構築するかが課題となっています。
加えて、複雑な法令や手続きについて事業主や労働者が正確な情報を得られるよう、分かりやすい情報提供や相談体制の強化も継続的な課題とされています。
条文の原文も、その場で確認できます
この記事で引用した条文は、すべて「ことのり」で実際に検索した結果にもとづいています。自社の状況に合わせて聞き方を変えれば、関連条文と出典リンクが付いた形で結果が返ってきます。
雇用保険料の負担をことのりで調べるよくある質問
雇用保険の適用事業になるのは、どの時点ですか
徴収法第4条により、雇用保険法第5条第1項の適用事業の事業主については、その事業が開始された日に、その事業につき雇用保険に係る保険関係が成立します。また雇用保険法第5条は「労働者が雇用される事業を適用事業とする」と定めています。届出をしたときから適用されるのではなく、事業を開始し労働者を雇用した時点で自動的に適用事業となる構造です。
雇用保険料は労使で半分ずつですか
単純な半分ずつではありません。徴収法第31条によれば、被保険者が負担するのは、一般保険料の額のうち雇用保険率に応ずる部分の額から二事業率(雇用安定事業及び能力開発事業に要する費用に対応する率)を乗じて得た額を減じた額の、二分の一です。事業主は、労働保険料の額のうち被保険者の負担すべき額を控除した残りの額を負担します。雇用安定事業・能力開発事業に対応する部分は被保険者の負担から外れるため、事業主側の負担が重くなります。具体的な率は事業の種類によって異なる場合があるため、厚生労働省の公表資料でご確認ください。
資格取得届の提出期限はいつまでですか
雇用保険法施行規則第6条により、労働者が被保険者となった事実のあった日の属する月の翌月10日までに、「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出します。初めて提出する場合や期限を超えて提出する場合などには、労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳などの証明書類の添付が必要とされています。なお、特定法人については電子申請による提出が原則です。
出典(一次情報)
- 🔗 雇用保険法 第5条(適用事業)
- 🔗 雇用保険法 第7条(被保険者に関する届出)
- 🔗 雇用保険法 第68条(保険料)
- 🔗 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第4条(保険関係の成立)
- 🔗 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第12条(一般保険料に係る保険料率)
- 🔗 労働保険の保険料の徴収等に関する法律 第31条(労働保険料の負担)
- 🔗 雇用保険法施行規則 第6条(被保険者となつたことの届出)
- 🔗 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則 第38条(労働保険料等の申告及び納付)
- 🔗 雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!|厚生労働省
- 🔗 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則(昭和47年03月31日労働省令第8号)|厚生労働省
- 🔗 労働保険料の申告・納付|厚生労働省
- 🔗 雇用保険改正による雇用保険料負担~利益に与える財務への影響~(ニュース元)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。