病気の治療を受けながら働く労働者を支える制度を整えるとき、最初に押さえるべきは「事業主が法令上どこまで配慮する義務を負うのか」と「本人の病歴などの健康情報をどう扱えばよいのか」の二点です。前者は労働契約法第5条の安全配慮義務と労働安全衛生法の健康確保措置、後者は労働安全衛生法第104条・第105条と個人情報保護法上の要配慮個人情報のルールが土台になります。

この記事を書いたきっかけは、Works Human Intelligenceが2026年4月の法改正を受けて公表した「治療と仕事の両立支援」の実態調査です(報道記事)。支援制度の運用上の課題として本人のプライバシー保護と周囲の理解の両立が挙げられ、人事担当者の約3割が職場の雰囲気悪化を経験したと回答しています。つまり壁になっているのは制度の有無ではなく「情報の扱い方」です。そこで、制度設計の前提となる法令の条文を実際に調べました。本記事では、事業主が講ずべき健康確保措置と、健康情報の収集・保管・使用・共有のルールを、条文の原文リンク付きで整理します。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。 治療と仕事の両立支援は、個々の労働者の病状・治療内容・職場環境によって適切な対応が大きく変わる分野です。また健康情報は要配慮個人情報にあたり、取扱いを誤ると本人の不利益につながります。本記事は一般的な法令の枠組みの紹介にとどまり、個別の事案への判断を示すものではありません。最終判断は一次情報と専門家に確認してください。

土台は2つ:安全配慮・健康確保義務と、健康情報の取扱いルール

治療と仕事の両立支援において事業主が負う義務は、大きく二つの側面から捉えられます。一つは、労働者が安全かつ健康に働き続けられるよう配慮する「安全配慮・健康確保義務」、もう一つは労働者の機微な「健康情報の適切な取扱いに関するルール」です。これらは労働契約法と労働安全衛生法を主軸とし、個人情報保護法や関連する厚生労働省の通達・ガイドラインによって具体化されています。

制度運用でつまずく場面の多くは、この二つが交差するところ——「どこまで配慮するために、誰にどこまで情報を伝えるか」——で起きます。順に見ていきます。

事業主が負う安全配慮・健康確保義務

包括的な義務:労働契約法第5条

事業主は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう、必要な配慮をする義務を負います。これが労働契約法第5条に規定される「安全配慮義務」であり、包括的な義務として位置づけられます。

この包括的な義務を具体化する形で、労働安全衛生法が事業主の健康確保に関する責務を定めています。労働安全衛生法第3条は、事業者が単に労働災害防止の最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて労働者の安全と健康を確保するようにしなければならないと明記しています。

健康診断後の措置

事業者は、定期健康診断等の結果、異常の所見があると診断された労働者について、医師または歯科医師の意見を聴取しなければなりません(労働安全衛生法第66条の4)。

その意見を勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少などの措置を講じる必要があります(労働安全衛生法第66条の5)。同条では、作業環境測定の実施や施設・設備の設置または整備、医師等の意見を衛生委員会もしくは安全衛生委員会または労働時間等設定改善委員会へ報告することなども定められています。

面接指導とその事後措置

長時間労働者など、労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対しては、医師による面接指導を実施しなければなりません(労働安全衛生法第66条の8)。面接指導の結果に基づき医師の意見を聴取し、その意見を勘案して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮などの必要な措置を講じる義務があります。

さらに、面接指導の対象とならない労働者であっても、健康への配慮が必要な者については、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならないとされています(労働安全衛生法第66条の9)。治療を受けながら働く労働者への配慮は、この努力義務の射程に入る場面が多い部分です。

健康相談に応じられる体制の整備

事業者は、産業医等による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医等が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努める必要があります(労働安全衛生法第13条の3)。冒頭の調査で課題とされた「相談しにくさ」は、この体制整備に直結する論点です。

健康情報の取扱いルール

病歴は「要配慮個人情報」

労働者の病歴などの健康情報は、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」に該当し、その取扱いには特に慎重さが求められます。個人情報保護委員会は雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項を示しており、厚生労働省も治療と仕事の両立についてのページで関連情報を公開しています。

収集・保管・使用の原則:第104条

労働安全衛生法第104条は、事業者が同法またはこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、または使用するに当たっては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で収集し、当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、使用しなければならないと規定しています。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合はこの限りではないとされています。

同条はあわせて、事業者が労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならないことを定めています。厚生労働省はこの適正管理を促進するための指針を公表しており、事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引きや関連資料で、取扱規程の策定方法や目的、取り扱う者の範囲などが具体的に解説されています。

秘密保持義務:第105条

健康診断や面接指導の実施事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならないと、労働安全衛生法第105条で義務付けられています。これは、労働者のプライバシー保護と、労働者が安心して健康相談や健康診断を受けられる環境を確保するために極めて重要な規定です。

実務で論点になりやすい4つのポイント

1. 安全配慮義務をどう具体化するか

個々の労働者の病状や治療状況は多岐にわたるため、一律の対応は困難です。事業主は、主治医や産業医、労働者本人との連携を通じて、病状の特性、治療内容、予後、労働者の希望などを総合的に把握し、個別の状況に応じた就業上の配慮(勤務時間、業務内容、休憩、通院への配慮など)を具体的に検討する必要があります。

2. 情報取得の範囲と同意の取り方

健康情報を取得する際は、その目的を明確にし、必要最小限の範囲に留めることが重要です。特に主治医から情報提供を受ける際には、労働者本人の明確な同意を事前に取得することが不可欠です。同意の取得にあたっては、情報提供の目的、提供される情報の種類、提供先、情報の利用方法などを具体的に説明し、労働者が十分に理解した上で判断できるよう配慮する必要があります。

3. 情報共有の範囲とプライバシー保護

健康情報を共有する範囲は、業務上の必要性に基づいて厳格に限定されるべきです。共有する際は目的を明確にし、必要最小限の担当者(産業保健スタッフ、人事担当者、直属の上司など)に限定し、秘密保持義務を徹底します。特に直属の上司や同僚への情報共有は、労働者のプライバシー保護と職場の人間関係に配慮し、本人の同意を得た上で、必要最小限の情報に留めるべき部分です。冒頭の調査が示す「プライバシー保護と周囲の理解の両立」という課題は、まさにこの線引きの問題として現れます。

4. 両立支援計画の策定

厚生労働省は治療と仕事の両立支援を推進するためのガイドラインやツールを提供しており(治療と仕事の両立支援ナビ)、事業主が労働者と協力して両立支援計画を策定することが推奨されています。計画には労働者の病状、治療内容、就業上の配慮事項、目標などを盛り込み、定期的な見直しを行うことで、労働者が安心して治療を継続しながら働き続けられる環境を整備していく形です。

判断に迷ったときに参照する指針

具体的な判断に迷う場合は、厚生労働省が公表している通達やガイドラインが重要な手がかりになります。事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引きや雇用管理分野における健康情報の取扱いに関する留意事項は、健康情報の適切な管理体制を構築するための具体的な手順や留意点を示しています。内容には、健康情報の収集・利用目的の特定、取扱者の限定、安全管理措置、開示・訂正・利用停止等の労働者の権利への対応などが含まれます。

健康診断や面接指導後の就業上の措置については、医師の意見を尊重しつつ、労働者本人の意向も踏まえることが重要です。医師の意見が「就業制限」や「要休業」である場合、事業主は安全配慮義務に基づき、その意見を尊重した措置を講じることになります。一方で、労働者が治療を継続しながら就業を希望する場合には、産業医や主治医と連携し、業務内容の変更、労働時間の短縮、フレックスタイム制の導入、テレワークの活用など、柔軟な働き方を検討することが求められます。

これらの指針は法令の解釈を補完するものであり、個別の事案に応じた判断は、産業医・主治医・社会保険労務士等の専門家と相談しながら進めてください。

条文の原文も、その場で確認できます

本記事で引用した条文は、すべてe-Govの一次情報へのリンク付きです。自社の状況に合わせて「うちの場合はどの条文が関係するのか」を調べたいときは、ことのりに質問を入れるだけで、関連条文と出典リンク付きのレポートが返ります。

治療と仕事の両立支援をことのりで調べる

よくある質問

本人の病歴を、直属の上司や同僚にどこまで伝えてよいのでしょうか

健康情報を共有する範囲は、業務上の必要性に基づいて厳格に限定されるべきものです。共有する際は目的を明確にし、必要最小限の担当者(産業保健スタッフ、人事担当者、直属の上司など)に限定し、秘密保持義務を徹底する必要があります。特に直属の上司や同僚への情報共有は、プライバシー保護と職場の人間関係に配慮し、本人の同意を得た上で、必要最小限の情報に留めるべきとされています。なお労働安全衛生法第104条は、収集した情報を収集目的の範囲内で保管・使用しなければならないと定めています。

健康診断で異常の所見があった従業員について、会社は何をすればよいですか

まず、医師または歯科医師の意見を聴取しなければなりません(労働安全衛生法第66条の4)。その意見を勘案し、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じるほか、作業環境測定の実施、施設または設備の設置・整備などを行うこととされています(同法第66条の5)。具体的にどの措置を選ぶかは個別の状況によるため、産業医等と相談しながら検討してください。

面接指導の対象にならない従業員についても、会社の配慮義務はありますか

労働安全衛生法第66条の9は、面接指導を行う労働者以外の労働者であって健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより必要な措置を講ずるように努めなければならないと定めています。また、労働契約法第5条の安全配慮義務は包括的な義務として位置づけられており、面接指導の対象かどうかにかかわらず適用されるものです。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。

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