選挙期間中のSNS上の偽情報・誹謗中傷対策として、SNS事業者に悪影響軽減措置を義務づける法改正の骨子案で与野党が合意した、というニュース(選挙偽情報対策で法改正骨子案 SNS事業者に対策義務づけ)が報じられました。プラットフォーム事業者への違法・有害情報対応の義務化が一段と進む流れですが、その土台は既存の「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(通称:プロバイダ責任制限法/情報流通プラットフォーム対処法)にあります。
そこで、SNSや自社サイトでユーザー投稿を扱う事業者がこの法律のもとで負っている、削除(送信防止措置)と発信者情報開示の基本的な枠組みを「ことのり」で実際に調べました。本記事では、損害賠償責任の制限の構造、大規模事業者に課される追加義務、発信者情報開示の要件と2段階開示の流れを整理します。
本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。プロバイダ責任制限法は表現の自由と権利侵害救済のバランスを扱う領域で、個別事案の判断は事実関係や裁判例の蓄積に大きく左右されます。実際の削除可否・開示可否の判断、社内手続きの設計は、必ず一次情報(e-Govの条文、総務省資料)と弁護士など専門家にご確認ください。
そもそもプロバイダ責任制限法とは
正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」です。インターネット上の情報流通によって発生する権利侵害について、特定電気通信役務提供者(SNSやウェブサイト運営事業者、インターネット接続サービス提供者など)の損害賠償責任の制限と、発信者情報の開示請求に関するルールを定めています。
「特定電気通信役務提供者」は、不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(特定電気通信)を提供する者を指し、SNSやウェブサイトの運営者がこれに該当します(本法第2条)。
削除(送信防止措置)の基本構造
原則は「責任を負わない」
特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害された場合でも、運営事業者は原則として損害賠償責任を負いません。ネット上の膨大な情報流通を全て監視・管理することは現実的ではない、という考え方が背景にあります。
ただし、技術的に送信防止措置を講じることが可能で、かつ次のいずれかに該当するときは、損害賠償責任を負う可能性があります(本法第3条)。
- 当該役務提供者が権利侵害を知っていたとき
- 当該役務提供者が権利侵害を知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき
つまり、法律が直接「削除しなさい」と命じているわけではなく、「知りながら放置すれば賠償責任を負う可能性がある」という形で、間接的に送信防止措置を促す構造になっています。
削除した側が責任を負わない条件
逆に、送信防止措置を講じたことで発信者に損害が生じた場合、運営事業者は次のいずれかに該当すれば賠償責任を負いません(本法第3条)。
- 他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき
- 被侵害者からの申出を受け、発信者に対し侵害情報を示して送信防止措置に同意するかを照会し、発信者が照会を受けた日から7日を経過しても同意しない旨の申出がなかったとき
この「発信者への意見照会」は、削除の正当性を担保し、発信者の表現の自由とのバランスを図るうえで重要な手続きです。
大規模事業者に課される追加義務
大規模特定電気通信役務提供者には、一般の事業者に加えて次の義務が課されています。
申出受付方法の公表
権利侵害を受けたとする者が、侵害情報等を示して送信防止措置の申出ができるよう、その方法を定め、総務省令で定めるところにより公表しなければなりません(本法第22条)。
侵害情報に係る調査の実施
被侵害者から申出があったときは、当該申出に係る侵害情報の流通によって権利が不当に侵害されているかどうかについて、遅滞なく必要な調査を行わなければなりません(本法第23条)。
送信防止措置の基準の公表
原則として、自ら定めて公表している基準に従う場合に限り送信防止措置を講じることができます(本法第26条)。例外として、発信者自身である場合、法令上の義務がある場合、緊急の必要により基準に明示されていない種類の情報に措置を講じる場合は、基準によらず措置を講じることができるとされています。
発信者への通知
送信防止措置を講じたときは、原則として遅滞なく、その旨と理由を発信者に通知するか、発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければなりません(本法第27条)。
発信者情報開示の枠組み
開示請求の2つの要件
権利侵害を受けたとする者は、特定電気通信役務提供者に対し、発信者情報の開示を請求することができます。開示が認められるためには、次の2つを満たす必要があります(本法第5条)。
- 権利侵害の明白性:侵害情報の流通によって、請求者の権利が侵害されたことが明らかであること
- 正当な理由:損害賠償請求権の行使のために必要である場合など、開示を受けるべき正当な理由があること
「発信者情報」は、氏名・住所その他の発信者の特定に資する情報で総務省令で定めるものをいいます(本法第2条)。
2段階開示と発信者情報開示命令
実務上、発信者情報の開示は2段階で行われることが多くあります。まず、SNSやウェブサイトの運営者(コンテンツプロバイダ)に投稿時のIPアドレス等の開示を請求し、次にそのIPアドレスから特定されるインターネット接続サービス提供者(経由プロバイダ)に契約者の氏名・住所等の開示を請求する、という流れです。
2022年の法改正により、発信者情報開示命令事件に関する裁判手続が創設されました。裁判所は、権利を侵害されたとする者の申立てにより、決定で、開示関係役務提供者に対し発信者情報の開示を命ずることができます(本法第8条)。これにより、より迅速かつ効率的な開示が可能となりました。
運営事業者として押さえておきたい実務ポイント
権利侵害の申告があったとき、削除の可否は「権利侵害の明白性」を慎重に判断する必要があります。明白でないのに安易に削除すれば、発信者の表現の自由を不当に侵害する可能性があり、明白なのに放置すれば損害賠償責任を問われる可能性があります。本法第3条の発信者への意見照会手続きは、このバランスを取るための重要なプロセスです。
発信者情報開示請求を受けた場合も、要件の審査は厳格に行う必要があり、任意での開示は発信者のプライバシー保護の観点から慎重に行われるべきです。多くの場合、裁判所による発信者情報開示命令に基づいて開示が行われています。
条文の原文も、その場で確認できます
本記事で触れた条文は、AI法令調査ツール「ことのり」から、関連条文と出典リンクつきで一度に確認できます。自社の投稿管理ルールや申出対応フローを見直すときの一次情報の集約にご活用ください。
SNS事業者の違法情報対応義務をことのりで調べるよくある質問
Q1. プロバイダ責任制限法は「投稿された違法情報を必ず削除しなさい」という法律ですか?
いいえ。本法は直接「削除義務」を課すものではなく、権利侵害を知りながら(または知ることができたと認めるに足りる相当の理由があったのに)放置した場合に損害賠償責任を負う可能性がある、という形で間接的に送信防止措置を促す構造です(本法第3条)。原則として運営事業者は責任を負わない、というのが出発点です。
Q2. 削除すべきか迷う投稿について、発信者に意見を聞かずに削除しても大丈夫ですか?
削除によって発信者に生じる損害について賠償責任を負わないための要件として、「不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき」のほか、被侵害者からの申出を受けて発信者に同意を照会し、7日を経過しても同意しない旨の申出がなかったとき、が定められています(本法第3条)。判断に迷う場合、この意見照会手続きを活用することが、削除の正当性を担保するうえで重要とされています。
Q3. 投稿者の情報を開示してほしいと請求されたら、すぐに開示してよいですか?
発信者情報の開示には、「権利が侵害されたことが明らかであること」と「開示を受けるべき正当な理由があること」の2つの要件を満たす必要があります(本法第5条)。発信者のプライバシー保護の観点から任意開示は慎重に行うべきで、実務上は2022年改正で創設された発信者情報開示命令(本法第8条)など裁判所の手続きを経て開示されるケースが多くあります。
出典(一次情報)
- 🔗 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律 第2条(定義)
- 🔗 同法 第3条(損害賠償責任の制限)
- 🔗 同法 第5条(発信者情報の開示請求)
- 🔗 同法 第8条(発信者情報開示命令)
- 🔗 同法 第22条(被侵害者からの申出を受け付ける方法の公表)
- 🔗 同法 第23条(侵害情報に係る調査の実施)
- 🔗 同法 第26条(送信防止措置の実施に関する基準等の公表)
- 🔗 同法 第27条(発信者に対する通知等の措置)
- 🔗 総務省|インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)
- 🔗 関連ニュース:選挙偽情報対策で法改正骨子案 SNS事業者に対策義務づけ(Google News)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。