2026年5月、改正健康保険法が成立し、市販薬と効能が似た「OTC類似薬」について自己負担を25%上乗せする仕組みや、出産費用の全国一律価格設定による無償化方針が盛り込まれました(関連ニュース)。こうした制度変更は、健康保険法が定める一部負担金や保険給付の範囲という土台のルールの上に設計されます。そこで本記事では、人事労務担当者や士業の方が制度変更を読み解く出発点として、健康保険法における自己負担割合の原則と保険給付の範囲、そして対象外療養の取り扱いを、条文ベースで整理しました。
結論から言うと、自己負担割合は年齢と所得により2割または3割が原則で、療養の給付の中身は「診察・薬剤・処置・在宅看護・入院」の5本柱です。食事療養や評価療養・選定療養などは原則対象外ですが、「保険外併用療養費」の仕組みで保険診療との併用が認められる場合があります。
健康保険法の「保険給付」とは何か
健康保険法では、被保険者に対して行う保険給付の種類を整理しています。健康保険法第52条は、療養の給付や入院時食事療養費、保険外併用療養費、療養費、傷病手当金、出産育児一時金、出産手当金など、被保険者が受けられる給付の全体像を列挙しています。
本記事では、このうち医療サービスそのものを意味する「療養の給付」と、それに伴う自己負担に焦点を当てて見ていきます。
一部負担金(自己負担割合)の原則
被保険者が保険医療機関や保険薬局で療養の給付を受けるときに支払う「一部負担金」のルールは、健康保険法第74条に定められています。療養に要する費用の額に、次の割合を乗じた額が一部負担金となります。
- 70歳に達する日の属する月以前の者:3割(100分の30)
- 70歳に達する日の属する月の翌月以後の者:2割(100分の20)
- 上記の70歳以降の者のうち、政令で定める方法で算定した報酬の額が政令で定める額以上の者:3割(100分の30)
つまり、現役世代は原則3割、70歳以降は原則2割で、いわゆる現役並み所得者は3割となる構造です。保険医療機関等はこの一部負担金を徴収する立場にあり、善良な管理者としての注意を払ってもなお支払われない場合には、保険者が徴収処分を行うことができるとされています(健康保険法第74条)。
療養の給付に関する費用の流れ
健康保険法第76条では、保険者が保険医療機関等に支払う費用の額は、療養の給付に要する費用の額から、被保険者が支払うべき一部負担金に相当する額を控除した額とすると整理されています。患者から窓口で受け取る自己負担と、保険者から医療機関に支払われる残りの部分の合計が、療養の給付に要する費用の全体像になるという建付けです。
支払いが困難なときの特例
健康保険法第75条の2は、災害その他厚生労働省令で定める特別の事情があり、一部負担金の支払いが困難と認められる被保険者に対し、保険者が次のいずれかの措置をとることができると定めています。
- 一部負担金を減額すること
- 一部負担金の支払を免除すること
- 保険医療機関等への支払に代えて、保険者が一部負担金を直接徴収すること
経済的に厳しい状況にある被保険者でも、医療へのアクセスを確保できるように設けられている仕組みです。
保険給付の範囲(療養の給付の中身)
「療養の給付」として何が含まれるかは、健康保険法第63条第1項と、保険医療機関及び保険医療養担当規則第1条に並列で規定されています。具体的な5つの内容は次のとおりです。
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置、手術その他の治療
- 居宅における療養上の管理およびその療養に伴う世話その他の看護
- 病院または診療所への入院およびその療養に伴う世話その他の看護
さらに、保険医療機関及び保険医療養担当規則第2条では、保険医療機関は懇切丁寧に療養の給付を担当しなければならず、その内容は患者の療養上「妥当適切」なものでなければならないとされています。
保険給付の対象外となる療養と「保険外併用療養費」
健康保険法第63条第2項は、療養の給付に「含まれないもの」を次のように整理しています。
- 食事療養:入院中の食事の提供(療養病床に入院する65歳以上の特定長期入院被保険者に係るものを除く)
- 生活療養:特定長期入院被保険者に係る、入院中の食事の提供および温度・照明・給水などの療養環境の形成
- 評価療養:厚生労働大臣が定める、高度の医療技術を用いた療養等で、保険給付の対象とすべきか評価が必要なもの
- 患者申出療養:患者の申出に基づき、高度の医療技術を用いた療養で、保険給付の対象とすべきか評価が必要なものとして厚生労働大臣が定めるもの
- 選定療養:被保険者の選定に係る特別の病室の提供など、厚生労働大臣が定める療養
これらは原則として保険給付の対象外ですが、評価療養・患者申出療養・選定療養については、健康保険法第86条に基づき「保険外併用療養費」が支給される場合があります。保険診療部分には通常どおり一部負担金を支払い、保険外診療部分は全額自己負担となりますが、その一部が保険外併用療養費として支給されることで、患者の負担を一定程度抑える仕組みとなっています。
療養指示に従わない場合の取り扱い
健康保険法第119条では、被保険者または被保険者であった者が、正当な理由なしに療養に関する指示に従わないときは、保険者は保険給付の一部を行わないことができると定められています。給付の前提として、療養上の指示に従うという行動が想定されている点は押さえておきたいところです。
会社の人事労務として押さえておきたい視点
従業員からは「自己負担はいくらか」「特定の治療は保険でカバーされるのか」といった質問が寄せられることがあります。法令上、ベースとなるのは以下の3点です。
- 自己負担割合は年齢と所得に応じて2割または3割(健康保険法第74条)
- 療養の給付の範囲は診察・薬剤・処置・在宅看護・入院の5本柱(健康保険法第63条)
- 評価療養・患者申出療養・選定療養などは保険外併用療養費として一部が支給されうる(健康保険法第86条)
個別の給付の可否や金額の判断は、政令・省令・告示や個別事情によって変わりますので、社内で一律に回答するのではなく、健康保険組合や協会けんぽ、社会保険労務士など専門窓口へつなぐ運用が安全です。
条文の原文も、その場で確認できます
健康保険法の条文や厚生労働省令は条数も多く、関連条文を行き来する読み方が必要です。「ことのり」では、関連条文・出典リンク付きで、AIが整理した回答をその場で確認できます。
健康保険の自己負担と給付範囲をことのりで調べるよくある質問
Q1. 健康保険の自己負担割合は、誰でも一律ですか?
いいえ、一律ではありません。健康保険法第74条では、70歳に達する日の属する月以前は3割、その翌月以後は原則2割、ただし政令で定める方法で算定した報酬の額が政令で定める額以上の場合は3割と整理されています。年齢と所得の組み合わせで決まる、というのが原則の考え方です。
Q2. 入院中の食事や差額ベッド代は健康保険でカバーされますか?
健康保険法第63条第2項では、入院中の食事の提供である「食事療養」や、被保険者の選定に係る特別の病室の提供などの「選定療養」は、療養の給付には含まれないと定められています。ただし、選定療養については健康保険法第86条の保険外併用療養費の対象となる場合があり、保険診療と組み合わせて利用できる仕組みになっています。
Q3. 災害などで自己負担金の支払いが難しいときはどうなりますか?
健康保険法第75条の2では、災害その他の特別の事情によって一部負担金の支払いが困難と認められる被保険者に対し、保険者が「減額」「免除」「保険医療機関への支払に代えて保険者が直接徴収する」のいずれかの措置を取ることができると定められています。具体的な要件や手続は保険者ごとに案内されているため、加入している健康保険組合や協会けんぽに確認することが必要です。
出典(一次情報)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。