「カウンター数席の小さな店でも、HACCPというものをやらないといけないのか」——結論から言えば、飲食店も対象です食品衛生法第51条第2項は「営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない」と定めています。文末は「努めなければならない」ではなく「しなければならない」——つまり努力義務ではなく義務です。

ただし、条文はそこで終わりません。同条第1項第2号には「小規模な営業者……その他の政令で定める営業者にあつては、その取り扱う食品の特性に応じた取組」という書き分けがあり、その「政令で定める営業者」を受けた食品衛生法施行令第34条の2には、「飲食店営業」が名指しで列挙されています。この記事では、義務の根拠・小規模の扱い・違反したときに何が起きるのかを、条文にあたって順番に確認します。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。 HACCPに沿った衛生管理の具体的な中身は、食品衛生法・施行令に加えて厚生労働省令や業種別の手引書に委ねられている部分が大きく、都道府県の条例で上乗せの定めが置かれることもあります(食品衛生法第51条第3項)。自店で何をどこまで行うべきかは、必ずe-Gov法令検索の最新の条文と、管轄の保健所にご確認のうえ判断してください。

義務の根拠は、食品衛生法第51条第2項

まず出発点の条文です。食品衛生法第51条は、厚生労働大臣が「公衆衛生上必要な措置」の基準を定めることと、営業者がそれを遵守することを、次のように定めています。

第五十一条 厚生労働大臣は、営業(器具又は容器包装を製造する営業及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第二条第五号に規定する食鳥処理の事業(第五十四条及び第五十七条第一項において「食鳥処理の事業」という。)を除く。)の施設の衛生的な管理その他公衆衛生上必要な措置(以下この条において「公衆衛生上必要な措置」という。)について、厚生労働省令で、次に掲げる事項に関する基準を定めるものとする。
 一 施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理に関すること。
 二 食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するための取組(小規模な営業者(器具又は容器包装を製造する営業者及び食鳥処理の事業の規制及び食鳥検査に関する法律第六条第一項に規定する食鳥処理業者を除く。次項において同じ。)その他の政令で定める営業者にあつては、その取り扱う食品の特性に応じた取組)に関すること。
2 営業者は、前項の規定により定められた基準に従い、厚生労働省令で定めるところにより公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない

読みどころは2つあります。

  • 第1項は「二本立て」——第1号の一般的な衛生管理(清掃、ねずみ・昆虫の駆除など)と、第2号の「特に重要な工程を管理するための取組」が並んでいます。世間で「HACCP義務化」と呼ばれているのは、後者の第2号のことです。日々の清掃や手洗いといった一般的な衛生管理は、それとは別に第1号として置かれています。
  • 第2項の文末は「遵守しなければならない」——義務規定に用いられる書きぶりです。「努めなければならない」(努力義務)ではありません。事業規模の大小を条文が区別しているのは第1項第2号のかっこ書きの部分であって、義務そのものに「小さい店は免除」という定めは置かれていません

「小規模だから対象外」ではなく「小規模だから取組の中身が変わる」

ここが誤解されやすいところです。条文をもう一度見ると、第1項第2号は対象から外しているのではなく、取組の内容を書き換えています

……特に重要な工程を管理するための取組(小規模な営業者……その他の政令で定める営業者にあつては、その取り扱う食品の特性に応じた取組)に関すること。

かっこの外は「特に重要な工程を管理するための取組」、かっこの中は「その取り扱う食品の特性に応じた取組」。やらなくてよい、とはどこにも書かれていません。小規模な営業者について変わるのは求められる取組の内容であって、義務の有無ではない、という構造です。

飲食店営業は、施行令に名指しで書かれている

では「小規模な営業者その他の政令で定める営業者」とは誰か。これを受けているのが食品衛生法施行令第34条の2です。

(小規模な営業者等)
第三十四条の二 法第五十一条第一項第二号の政令で定める営業者は、次のとおりとする。
 一 食品を製造し、又は加工する営業者であつて、食品を製造し、又は加工する施設に併設され、又は隣接した店舗においてその施設で製造し、又は加工した食品の全部又は大部分を小売販売するもの
 二 飲食店営業(食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいう。次条第一号において同じ。)又は調理の機能を有する自動販売機(容器包装に入れられず、又は容器包装で包まれない状態の食品に直接接触するものに限る。同条第二号において同じ。)により食品を調理し、調理された食品を販売する営業を行う者その他の食品を調理する営業者であつて厚生労働省令で定めるもの
 三 容器包装に入れられ、又は容器包装で包まれた食品のみを貯蔵し、運搬し、又は販売する営業者
 四 前三号に掲げる営業者のほか、食品を分割して容器包装に入れ、又は容器包装で包み、小売販売する営業者その他の法第五十一条第一項第一号に規定する施設の内外の清潔保持、ねずみ及び昆虫の駆除その他一般的な衛生管理並びに同項第二号に規定するその取り扱う食品の特性に応じた取組により公衆衛生上必要な措置を講ずることが可能であると認められる営業者であつて厚生労働省令で定めるもの

第2号の冒頭が「飲食店営業」です。しかも、この第2号には従業員数や席数の要件は書かれていません。条文の建て付けとしては、飲食店営業は営業の種類そのものによってこの号に位置づけられており、「何人以下なら小規模」という線引きで判定するかたちにはなっていません。

「従業員50人未満」という数字はどこから来るのか

HACCPの解説でよく見かける「従業員50人未満」という基準は、上に引用した施行令第34条の2の条文本体には出てきません。この数字は、厚生労働省の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のページで、小規模な営業者等の範囲を説明する際に示されているものです。

つまり条文(施行令)と行政の解説は、レイヤーが違います。第2号・第4号のように「厚生労働省令で定めるもの」と委任されている部分もあるため、自店がどの号に当たるのかを確認したいときは、条文の号の建て方と、厚生労働省の解説・管轄保健所の説明を両方見るのが確実です。少なくとも、「うちは従業員が50人以上だから飲食店でも小規模ではない」と自己判断する前に、第2号の書きぶりを確認する価値はあります。

具体的に何をすればよいか:計画をつくり、記録する

条文は「公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない」と書いています。ここから、実務でやることは大きく2つに整理できます。

  1. 定める——自店の衛生管理計画をつくる。ゼロから設計する必要はなく、厚生労働省の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」のページに、業種別の手引書がまとめられています。飲食店向けの手引書には、計画のひな形や記録様式が示されています。
  2. 遵守する——決めたとおりに実施し、実施した記録を残す。記録は、何かあったときに原因をたどるためのものであり、保健所の立入りの際に説明する材料にもなります。

手引書の入手先や、自店にどの手引書が合うのかが分からないときは、管轄の保健所に相談するのが早道です。農林水産省のページでも、改正食品衛生法の概要と手引書の位置づけが説明されています。

守らなかったらどうなるか:罰則そのものより「第60条の列挙」を見る

「罰則はあるのか」という質問はよく出ます。ここは条文を分けて読む必要があります。

第51条第2項の違反そのものを罰する規定は見当たらない

今回の調査では、第51条第2項に違反したこと自体に刑罰を科す条文は確認できませんでした。第81条第83条のいずれの号にも、第51条第2項は挙げられていません。

ただし、行政処分の対象条文には明記されている

実務でより重いのはこちらです。食品衛生法第60条は、営業許可の取消し・営業の禁止・期間を定めた停止ができる場合を列挙していますが、その列挙の中に「第五十一条第二項」が入っています

第六十条 都道府県知事は、営業者が第六条、第八条第一項、第十条から第十二条まで、第十三条第二項若しくは第三項、第十六条、第十八条第二項若しくは第三項、第十九条第二項、第二十条、第二十五条第一項、第二十六条第四項、第四十八条第一項、第五十条第二項、第五十一条第二項、第五十二条第二項若しくは第五十三条第一項の規定に違反した場合、……同条第一項の許可を取り消し、又は営業の全部若しくは一部を禁止し、若しくは期間を定めて停止することができる。

「罰則がない」と「行政上のペナルティがない」はまったく別の話です。衛生管理計画をつくっていない状態は、条文上、営業停止や許可取消しの理由として列挙されている項目に該当し得ます

処分に違反して営業を続けた場合は、刑罰の対象になる

さらに、第81条第1項第3号は、「第六十条……の規定による処分に違反して営業を行つた者」を、三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処すると定めています。つまり刑罰は、衛生管理計画の不備そのものではなく、その先の営業停止等の処分を無視して営業を続けた場合に登場します。

なお、法人と行為者の双方を罰する両罰規定は第88条に置かれていますが、同条は対象となる規定を号ごとに列挙する形式のため、どの違反が対象に含まれるかは条文本体でご確認ください。

都道府県の条例で上乗せがあり得る(第51条第3項)

もう一点、見落とされやすい項があります。食品衛生法第51条第3項です。

都道府県知事等は、公衆衛生上必要な措置について、第一項の規定により定められた基準に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができる

国の基準に反することはできませんが、地域の実情に応じた規定を条例で置くことは認められています。したがって「厚生労働省のページを見たから十分」とは限らず、営業する自治体の条例と保健所の運用まで確認するのが実務上の安全側です。

また、HACCPとは別の制度ですが、第57条は、営業を営もうとする者に対し、あらかじめ営業所の名称・所在地などを都道府県知事に届け出る義務を定めています。開業時にはこちらもあわせて確認してください。

条文を自分で確かめたいときは

AI法令調査ツール「ことのり」なら、調べたいことを日常の言葉で入力するだけで、食品衛生法第51条や施行令第34条の2のような根拠条文と出典リンク付きのレポートを数十秒で生成できます。今回の記事のように、「小規模な営業者」が政令の何号に書かれているか、違反が第60条の列挙に入っているかまで、原文にあたって確認できます。

HACCPの義務をことのりで調べる

よくある質問

Q1. 席が10席ほどの小さな飲食店でも、HACCPへの対応は必要ですか?

必要です。食品衛生法第51条第2項は「営業者は……公衆衛生上必要な措置を定め、これを遵守しなければならない」と定めており、店舗の規模による免除は条文に置かれていません。小規模な営業者について条文が変えているのは、同条第1項第2号のかっこ書き——取組の内容が「その取り扱う食品の特性に応じた取組」になるという点であって、義務の有無ではありません。

Q2. 「小規模な営業者」に飲食店は含まれるのですか?

食品衛生法施行令第34条の2は、法第51条第1項第2号の政令で定める営業者を4つの号で列挙しており、その第2号の冒頭が「飲食店営業(食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業をいう。)」です。条文上、飲食店営業はこの号に位置づけられています。

Q3. よく聞く「従業員50人未満」という基準は、条文のどこに書かれていますか?

施行令第34条の2の条文本体には、従業員数の要件は書かれていません。この数字は、厚生労働省の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」のページで、小規模な営業者等の範囲を説明するものとして示されています。条文と行政の解説はレイヤーが違うため、自店の位置づけを確認するときは両方を見るのが確実です。

Q4. 衛生管理計画をつくっていないと、罰金を取られますか?

今回の調査では、第51条第2項の違反そのものを罰する条文は確認できませんでした(第81条第83条のいずれの号にも挙げられていません)。ただし第60条は、営業許可の取消し・営業の禁止・停止ができる場合として「第五十一条第二項」を明記しています。さらに第81条第1項第3号は、第60条による処分に違反して営業を行った者を三年以下の拘禁刑又は三百万円以下の罰金に処すると定めています。

Q5. 何から手を付ければよいですか?

厚生労働省の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」のページから、自店の業種に合う手引書を入手し、そこに示された計画のひな形と記録様式に沿って自店の計画をつくるのが基本の流れです。手引書の選び方や記録の残し方に迷う場合は、管轄の保健所に相談してください。なお第51条第3項により都道府県の条例で規定が置かれていることがあるため、自治体の情報もあわせて確認するのが確実です。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。

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