「安全衛生教育は、工場や建設現場の話で、うちのような小さな会社には関係ない」——そう整理されていることがあります。ところが条文にあたると、業種や規模で線が引かれていないことが分かります。実施義務を定めた労働安全衛生法第59条第1項は「事業者は、労働者を雇い入れたときは」と書いており、業種・規模・雇用形態のいずれも要件に置いていないからです。

では、実際に何を教えればよいのか。それは法律ではなく省令の労働安全衛生規則第35条第1項に、八号まで具体的に列挙されています。そしてこの教育を省略できる場合も、同条第2項に書かれています。この記事では、①義務の本体はどの条文か、②教える中身はどこに書かれているか、③どういう場合に省略できるのか、④作業内容を変えたときはどうなるか、⑤罰則の列挙、を順に条文で確認していきます。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。 今回は、条番号と罰則の対応を確かめるために生検索を4回に分けて実行し、第120条第1号と第119条第1号の列挙を条文本体のまま取得して突き合わせています。一方で、教育の記録・保存を義務づける条文、および特別教育の対象業務を定める労働安全衛生規則第36条の条文本体は今回の調査では取得できていません。そのため本記事では、条文で確認できたことと、行政機関の解説で示されていることを意図的に分けて書いています。自社の該当・非該当や具体的な運用は、e-Gov法令検索の最新の条文と、管轄の労働基準監督署にご確認ください。

義務の本体は、労働安全衛生法第59条第1項

出発点の条文です。労働安全衛生法第59条は次のように定めています。

(安全衛生教育)
第五十九条 事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
3 事業者は、危険又は有害な業務で、厚生労働省令で定めるものに労働者をつかせるときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務に関する安全又は衛生のための特別の教育を行なわなければならない。

読みどころは4つあります。

  • 文末は「行なわなければならない」——「努めなければならない」(努力義務)ではなく、義務規定の書きぶりです。
  • 要件は「労働者を雇い入れたとき」だけ——条文の側に、業種の限定も、従業員数の下限も、雇用形態の区別も置かれていません。新入社員でも、短期のアルバイトでも、条文上は同じ「労働者を雇い入れたとき」に当たります。
  • 「厚生労働省令で定めるところにより」——何を教えるのかは法律ではなく省令に委ねられています。この条文だけを読んでも、教える中身は分かりません
  • 1項・2項・3項は別の場面の話——1項は雇入れ時、2項は作業内容の変更時、3項は危険・有害業務の特別教育です。後で見るように、この3つは罰則の重さが同じではありません

教える中身は、労働安全衛生規則第35条第1項の八号

実際の中身は省令にあります。労働安全衛生規則第35条第1項は、次の八号を挙げています。

(雇入れ時等の教育)
第三十五条 事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓とん及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

ここで見落とされやすいのが、「次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する……必要な事項について」という限定です。八号すべてを一律に教えるという書き方ではなく、その人が実際に就く業務に関係する範囲で教える、という構造になっています。たとえば事務職の人に、使わない機械の安全装置の取扱いを説明する必要はありません。逆にいえば、「うちは危ない機械がないから教育は不要」とはならず、六号(整理・整頓・清潔の保持)や七号(事故時の応急措置と退避)のように、業種を問わず関係する項目が残ります。

もう1つ、条文に「遅滞なく」と書かれている点も実務上は重要です。入社から数か月後にまとめて研修、という運用は、この文言との関係を意識しておく必要があります。

省略できるのは「十分な知識及び技能を有する」労働者について

教育を省略できる場合は、同じ労働安全衛生規則第35条の第2項に置かれています。

2 事業者は、前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる。

条文の書きぶりから読み取れることは2つです。

  • 省略の単位は「事項」ごと——「全部又は一部に関し」「当該事項についての教育を」とあり、経験者だから教育をまるごと省ける、という書き方にはなっていません。八号のうち、その人が十分な知識と技能を持つ項目だけを省略できる形です。
  • 今回取得した条文本体に、業種による省略の定めは見当たらない——第2項が定めているのは労働者の知識・技能を基準とした省略であり、「この業種なら一部の項目は不要」という形の規定は、今回の調査で取得した条文の中には含まれていませんでした。同業他社での経験がある人を採用した場合でも、機械や作業手順は職場ごとに違うため、どの項目を省略できるかは個別に判断することになります。

作業内容を変えたときも、同じ教育が必要になる

見落とされやすいのが労働安全衛生法第59条第2項です。「前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する」とあり、労働安全衛生規則第35条第1項も「労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは」と、雇入れ時と並べて書いています。

つまり、採用時に一度やれば終わりではありません。配置転換や担当替えで扱う機械・作業手順が変わったときにも、同じ枠組みで教育が必要になります。次に見るように、この2項違反も罰則の列挙に含まれています

罰則は、1項・2項と3項で条文が分かれている

ここが今回いちばん確認したかった部分です。条文本体を取得して突き合わせたところ、安全衛生教育の違反は、どの項に違反したかで根拠条文も罰則の重さも変わることが分かりました。

まず第120条(五十万円以下の罰金)の第1号です。長い列挙の中に、次の形で入っています。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 ……第五十七条の四第一項、第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第六十一条第二項、……の規定に違反したとき。

読みどころは、かっこ書きの「(同条第二項において準用する場合を含む。)」です。雇入れ時の教育(1項)だけでなく、作業内容を変更したときの教育(2項)も、同じ列挙の中に取り込まれています。条単位ではなく項単位、さらに準用まで含めて書かれている形です。

一方、特別教育を定めた第59条第3項は、第120条の列挙には入っていません。第3項が入っているのは、より重い第119条(六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金)の第1号のほうです。

第百十九条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
一 第十四条、第二十条から第二十五条まで、……第五十七条の五第五項、第五十九条第三項、第六十一条第一項、第六十五条第一項、……の規定に違反したとき。

整理すると次のようになります。同じ「安全衛生教育をしなかった」でも、条文上の扱いは一段違います。

  • 雇入れ時の教育(第59条第1項)——第120条第1号に列挙。五十万円以下の罰金。
  • 作業内容変更時の教育(第59条第2項)——同じく第120条第1号のかっこ書きに取り込まれている。五十万円以下の罰金。
  • 危険・有害業務の特別教育(第59条第3項)——第119条第1号に列挙。六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金。

なお、どの条文も罰則の主語は「当該違反行為をした者」と書かれています。会社と個人のどちらが対象になるかは、実際の事案の状況によって判断されるところですので、断定的な理解は避け、具体的なケースは専門家にご確認ください。

今回の調査で条文までたどれたこと/たどれなかったこと

  • 条文本体で確認できたこと——第59条の1項・2項・3項の書きぶり、安衛則第35条第1項の八号と「遅滞なく」「従事する業務に関する」という限定、同条第2項の省略の要件、第120条第1号の列挙に「第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)」が入っていること、第119条第1号の列挙に「第五十九条第三項」が入っていること。
  • 今回たどれなかったこと——教育の実施記録の作成・保存を義務づける条文本体(実施記録の保存は行政機関の解説で推奨されていますが、今回は根拠条文を取得できていないため、本記事では年数などを記載していません)、および特別教育の対象業務を列挙する労働安全衛生規則第36条の条文本体。

条文を自分で確かめたいときは

AI法令調査ツール「ことのり」なら、調べたいことを日常の言葉で入力するだけで、労働安全衛生法第59条や労働安全衛生規則第35条のような根拠条文と出典リンク付きのレポートを数十秒で生成できます。今回の記事のように、「第120条の罰則の列挙に第59条第2項は入っているか」「第35条第2項に業種による省略の定めはあるか」まで、原文にあたって確認できます。

安全衛生教育の実施義務をことのりで調べる

よくある質問

Q1. 短期のアルバイトにも安全衛生教育は必要ですか?

労働安全衛生法第59条第1項は「事業者は、労働者を雇い入れたときは」と定めており、雇用形態や雇用期間による区別を条文に置いていません。したがって、短期のアルバイトであっても、雇い入れた以上は対象になると読むのが条文の素直な理解です。ただし教える中身は労働安全衛生規則第35条第1項が「当該労働者が従事する業務に関する……必要な事項について」と限定しているため、その人が実際に就く業務に応じた範囲になります。自社の運用が適切かは、管轄の労働基準監督署にご確認ください。

Q2. 事務職しかいない会社でも教育は必要ですか?

労働安全衛生法第59条第1項にも労働安全衛生規則第35条第1項にも、業種や職種で対象を限定する文言は置かれていません。教える中身が「従事する業務に関する……必要な事項」に絞られるだけで、義務そのものが業種によって外れるという書き方にはなっていません。実際、八号のうち六号(整理、整頓及び清潔の保持)や七号(事故時等における応急措置及び退避)は、事務所であっても関係する項目です。

Q3. 前職で同じ仕事をしていた経験者なら、教育を省略できますか?

労働安全衛生規則第35条第2項は「前項各号に掲げる事項の全部又は一部に関し十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該事項についての教育を省略することができる」と定めています。省略できるのは、その人が十分な知識と技能を持つと認められる事項ごとであり、経験者だから一括で省ける、という書き方ではありません。機械の配置や作業手順は職場ごとに違うため、どの項目を省略するかは個別の判断になります。

Q4. 配置転換のときも、あらためて教育が必要ですか?

労働安全衛生法第59条第2項が「前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する」と定めており、労働安全衛生規則第35条第1項も「労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは」と並べて書いています。したがって、担当する作業の中身が変わったときも、同じ枠組みで教育が必要になります。この2項違反は第120条第1号のかっこ書きに取り込まれており、罰則の対象としても条文に規定されています。

Q5. 安全衛生教育をしなかった場合、罰則はありますか?

条文の列挙で分かれています。第120条第1号には「第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)」が名指しで含まれており、雇入れ時と作業内容変更時の教育を行わなかった場合は五十万円以下の罰金の対象として規定されています。一方、危険・有害業務の特別教育(第59条第3項)は第120条ではなく第119条第1号に列挙されており、六月以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金と、より重い罰則が規定されています。

Q6. 教育を実施した記録は残す必要がありますか?

行政機関の解説では、実施日時・内容・対象者などの記録を残すことが推奨されています。ただし、今回の調査では、雇入れ時教育の記録の作成・保存を義務づける条文本体を取得できていません。そのため本記事では、保存年数などの数値は記載していません。記録の要否と期間については、e-Gov法令検索の労働安全衛生規則、または管轄の労働基準監督署でご確認ください。なお、実施したこと自体を後から示せる状態にしておくことは、実務上は有用と考えられます。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。

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