「うちのスタッフはほとんどがパートだから、健康診断は正社員だけでいい」——そう整理している会社は少なくありません。ところが条文にあたると、雇用形態の名称は判断基準になっていないことが分かります。実施義務を定めた労働安全衛生法第66条第1項は「事業者は、労働者に対し」と書いており、正社員・パート・アルバイトといった区別を置いていないからです。

では何で線を引くのか。答えは省令(労働安全衛生規則)の「常時使用する労働者」という言い方にあります。そしてこの言葉には、法令上の明文の定義規定がありません。この記事では、①義務の本体はどの条文か、②雇入時と定期はどの省令の条文か、③パート・アルバイトが対象になる判断基準はどこから来ているのか、④記録と通知、⑤罰則の列挙、を順に条文で確認していきます。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。 今回の調査では、健康診断個人票の保存年数を定めているとされる労働安全衛生規則の条文本体、および「常時使用する労働者」の定義規定は取得できていません。そのため本記事では、条文で確認できたことと、行政機関の解説で示されていることを意図的に分けて書き、年数などの数値は条文で確認できたものだけを記載しています。自社の該当・非該当や具体的な運用は、e-Gov法令検索の最新の条文と、管轄の労働基準監督署・産業保健総合支援センターにご確認ください。

義務の本体は、労働安全衛生法第66条第1項

出発点の条文です。労働安全衛生法第66条第1項は次のように定めています。

(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない

読みどころは3つあります。

  • 文末は「行わなければならない」——「努めなければならない」(努力義務)ではなく、義務規定の書きぶりです。
  • 対象は「労働者」——条文の側では、正社員・パート・アルバイトといった区別を置いていません。区別は省令の「常時使用する労働者」という言い方のほうに出てきます。
  • 「厚生労働省令で定めるところにより」——誰に、いつ、どんな項目の検査を行うのかは、法律ではなく省令(労働安全衛生規則)に委ねられています。この条文だけを読んでも、雇入時なのか年1回なのかは分かりません

なお、かっこ書きで「第六十六条の十第一項に規定する検査を除く」とされています。これはストレスチェックのことで、同じ健康関連でも別建ての制度です。健康診断の話にストレスチェックの人数要件を持ち込まないよう、条文の側で線が引かれている形になります。

雇入れ時の健康診断は、労働安全衛生規則第43条

実際の中身は省令にあります。労働安全衛生規則第43条は次のとおりです。

(雇入時の健康診断)
第四十三条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。

実務でよく効くのが、このただし書きです。入社前3か月以内に受けた健康診断の結果を証明する書面が提出されていれば、その健康診断の項目に相当する項目については実施しなくてよい、と条文が定めています。「相当する項目については」という限定が付いている点は、条文どおりに読んでおく価値があります。丸ごと免除ではなく、重なる項目についての話だからです。

検査項目は同条の各号に列挙されており、既往歴・業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の有無の検査、身長・体重・腹囲・視力・聴力の検査、胸部エックス線検査、血圧の測定、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、尿検査、心電図検査が含まれます。

紛らわしい「第66条」——法律の第66条と省令の第66条は別物

今回の調査で最初に返ってきたのは、実は労働安全衛生規則第66条でした。同じ「第六十六条」でも、こちらは免許の取消し等を定めた規定で、健康診断とはまったく関係がありません。

労働安全衛生の分野は、法律(労働安全衛生法)・政令(施行令)・省令(労働安全衛生規則)の3階建てで、それぞれに第43条や第66条が存在します。条番号だけをメモして引用すると、別の法令の同じ番号を引いてしまうことがあります。社内資料や顧客説明に条番号を書くときは、「労働安全衛生法の」「労働安全衛生規則の」まで含めて書くのが安全です。

定期健康診断は、労働安全衛生規則第44条

労働安全衛生規則第44条は、年1回の健康診断を定めています。

(定期健康診断)
第四十四条 事業者は、常時使用する労働者第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。

ここでも対象は「常時使用する労働者」です。頻度は「一年以内ごとに一回」と条文に明記されています。

見落としやすいのが、かっこ書きの「第四十五条第一項に規定する労働者を除く」という部分です。この条文は、一部の労働者を第44条の枠から外し、別の条文(第45条)で扱う建て付けになっています。ただし今回の調査では第45条の条文本体は取得できていませんので、どの範囲の労働者が該当するのかは、e-Gov法令検索の労働安全衛生規則第45条を直接ご確認ください。深夜業などの特定業務に従事する労働者については、実務上、頻度の異なる健康診断が案内されています(職場のあんぜんサイト)。

検査項目は第44条の各号に列挙されており、雇入時(第43条)とほぼ同様ですが、胸部エックス線検査に加えて喀痰検査が含まれる点、および一部の項目は厚生労働大臣が定める基準に基づき医師が必要でないと認めるときは省略できる点が異なります。

本題:パート・アルバイトは「常時使用する労働者」に入るのか

ここが実務でいちばん問われるところです。そして今回の調査で確認できたのは、次の事実でした。

「常時使用する労働者」について、法令上の明文の定義規定は存在しません。 第43条にも第44条にも定義は置かれておらず、労働安全衛生法の側にもありません。判断基準は、行政解釈として示されているものです。

岡山産業保健総合支援センターの労働衛生コラムの解説では、雇用形態の名称(正社員・パートタイマー・アルバイトなど)にかかわらず、次のいずれかに当たる労働者が「常時使用する労働者」に該当するとされています。

  • 期間の定めのない労働契約により使用される者
  • 期間の定めのある労働契約でも、次の両方を満たす者
    • 1年以上継続して使用されることが予定されている(契約期間が1年以上、または更新により1年以上使用されることが見込まれる)
    • 1週間の所定労働時間が、同じ事業場で同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の4分の3以上である

また同じ解説では、4分の3未満であっても2分の1以上である場合は、健康診断を実施することが望ましいとされています。

ここで大事なのは、この「4分の3」という数字は、今回の調査では条文本体に見つかっていないということです。条文の建て付け上、法律が省令に委ね、省令が「常時使用する労働者」という言葉を定義せずに使っているため、判断基準が行政解釈のレイヤーに置かれている構図になります。自社の線引きを決めるときは、この解説を出発点にしつつ、管轄の労働基準監督署や産業保健総合支援センターに、自社の契約形態を示して確認するのが確実です。

実務的には、パートタイマーだから対象外という整理はできず、契約期間(または更新の見込み)と週所定労働時間の2つを、正社員の所定労働時間と並べて見るという手順になります。労働条件通知書や労働契約書に週所定労働時間が明記されていれば、確認そのものは難しくありません(労働条件明示のルール)。

やって終わりではない——記録(第66条の3)と本人への通知(第66条の6)

健康診断は、実施すれば完了というものではありません。条文は、記録と通知をそれぞれ別の条に置いています。

(健康診断の結果の記録)
第六十六条の三 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第六十六条第一項から第四項まで及び第五項ただし書並びに前条の規定による健康診断の結果を記録しておかなければならない

(健康診断の結果の通知)
第六十六条の六 事業者は、第六十六条第一項から第四項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない

労働安全衛生法第66条の3が定めているのは記録そのものの義務で、具体的な保存年数は「厚生労働省令で定めるところにより」として省令に委ねられています。今回の調査では、その省令の条文本体(健康診断個人票の保存年数を定めた規定)は取得できませんでした。実務では一定年数の保存が案内されていますが、本記事では条文で確認できていない年数は書きません。年数はe-Gov法令検索の労働安全衛生規則、または管轄の労働基準監督署でご確認ください。

労働安全衛生法第66条の6の通知義務は、見落とされやすい規定です。「健康診断を受けさせた」だけでは足りず、その結果を労働者本人に通知するところまでが事業者の義務として条文に書かれています。次に見るとおり、この条文は罰則の列挙にも入っています。

罰則——第120条第1号に、第66条第1項も第66条の3も第66条の6も名指しで入っている

労働安全衛生法第120条は、五十万円以下の罰金の対象となる条項を号ごとに列挙しています。今回の調査で条文本体を確認したところ、第1号の長い列挙のなかに、健康診断まわりの条文が名指しで並んでいました。

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する場合には、当該違反行為をした者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 ……第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、第六十一条第二項、第六十六条第一項から第三項まで第六十六条の三第六十六条の六、第六十六条の八の二第一項、第六十六条の八の四第一項……の規定に違反したとき。

つまり、健康診断を実施しないこと(第66条第1項)だけでなく、結果を記録しないこと(第66条の3)、結果を本人に通知しないこと(第66条の6)も、それぞれ罰則の対象として条文に列挙されています。「実施はしているが、結果を本人に渡していない」という運用は、条文の建て付け上、実施していないのと同じ列挙のなかに置かれていることになります。

この点は、同じ労働安全衛生法でもストレスチェック(第66条の10)とは扱いが異なります。ストレスチェックについては、第120条の各号に第66条の10が含まれていませんでした。同じ法律の隣り合った制度でも、罰則の列挙に入っているかどうかは違うため、「労働安全衛生法だから一律に罰則がある/ない」とまとめるのは正確ではありません。

労働者の側にも受診義務がある(第66条第5項)

健康診断は事業者の義務であると同時に、労働者の義務でもあります。労働安全衛生法第66条第5項です。

5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

本文で受診義務を定めたうえで、ただし書きに拒否ではなく代替手段が置かれている構造です。会社が指定した医療機関に行きたくない、という申出があったときは、「受けなくてよい」ではなく「他の医師の健康診断を受けて、結果を証明する書面を出してもらう」という運用が条文どおりの対応になります。

まとめ:条文で確定できること/行政の解説で補うこと

  • 条文で確定できること——実施義務そのもの(労働安全衛生法第66条第1項の「行わなければならない」)、雇入時健康診断と3か月以内の診断書による項目の省略(安衛則第43条ただし書き)、定期健康診断が「一年以内ごとに一回」であること(安衛則第44条)、結果の記録義務(第66条の3)と本人への通知義務(第66条の6)、第120条第1号の列挙に第66条第1項・第66条の3・第66条の6が入っていること、労働者側の受診義務と代替手段(第66条第5項)。
  • 行政の解説で補う必要があること——「常時使用する労働者」の判断基準(1年以上の継続使用の見込み、週所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上)、4分の3未満・2分の1以上の場合に実施が望ましいとされること。いずれも今回の調査では条文本体に見つかっていません。
  • 今回たどれなかったこと——健康診断個人票の保存年数を定める省令の条文本体、および安衛則第45条第1項(定期健康診断の対象から除かれる労働者)の条文本体。

条文を自分で確かめたいときは

AI法令調査ツール「ことのり」なら、調べたいことを日常の言葉で入力するだけで、労働安全衛生法第66条や労働安全衛生規則第43条・第44条のような根拠条文と出典リンク付きのレポートを数十秒で生成できます。今回の記事のように、「第120条の罰則の列挙に第66条の3は入っているか」「常時使用する労働者に定義規定はあるか」まで、原文にあたって確認できます。

健康診断の実施義務をことのりで調べる

よくある質問

Q1. パートやアルバイトにも健康診断を受けさせる義務はありますか?

雇用形態の名称では決まりません。労働安全衛生法第66条第1項は「労働者に対し」と定めており、省令の労働安全衛生規則第43条労働安全衛生規則第44条が対象を「常時使用する労働者」としています。この「常時使用する労働者」には法令上の明文の定義規定がなく、行政解釈として、期間の定めのない労働契約の者、または「1年以上継続して使用される予定」かつ「週所定労働時間が同種業務の通常の労働者の4分の3以上」の者が該当するとされています(岡山産業保健総合支援センターの労働衛生コラム)。したがって、この基準を満たすパート・アルバイトは対象になります。自社の線引きは、契約期間と週所定労働時間を確認したうえで、管轄の労働基準監督署等にご確認ください。

Q2. 入社前に受けた健康診断の結果があれば、雇入れ時の健康診断は省略できますか?

労働安全衛生規則第43条のただし書きは、「医師による健康診断を受けた後、三月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない」と定めています。全部が免除されるのではなく、提出された健康診断と重なる項目について実施しなくてよい、という書き方である点にご注意ください。

Q3. 定期健康診断はどのくらいの頻度で行う必要がありますか?

労働安全衛生規則第44条は「常時使用する労働者(第四十五条第一項に規定する労働者を除く。)に対し、一年以内ごとに一回、定期に」健康診断を行わなければならないと定めています。なお、かっこ書きで除かれている第45条第1項の労働者については、今回の調査では条文本体を取得できていないため、対象範囲と頻度はe-Gov法令検索の労働安全衛生規則第45条でご確認ください。

Q4. 健康診断の結果は、どのくらい保存する必要がありますか?

労働安全衛生法第66条の3は「厚生労働省令で定めるところにより……健康診断の結果を記録しておかなければならない」と定めており、保存年数そのものは条文ではなく省令に委ねられています。今回の調査ではその省令の条文本体を取得できなかったため、本記事では年数を記載していません。年数は、e-Gov法令検索の労働安全衛生規則、または管轄の労働基準監督署でご確認ください。なお、記録義務そのものに違反した場合は、労働安全衛生法第120条第1号の列挙に第66条の3が入っているため、罰則の対象となります。

Q5. 健康診断をやらないと罰則がありますか?

労働安全衛生法第120条第1号の列挙には、「第六十六条第一項から第三項まで」「第六十六条の三」「第六十六条の六」が名指しで含まれています。したがって、健康診断を実施しないこと、結果を記録しないこと、結果を本人に通知しないことは、いずれも五十万円以下の罰金の対象として条文に規定されています。ストレスチェック(第66条の10)が同じ列挙に入っていないのとは扱いが異なる点にご注意ください。

Q6. 従業員が健康診断の受診を断ったらどうすればよいですか?

労働安全衛生法第66条第5項は「労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない」と定めています。ただし書きでは、会社が指定した医師の健康診断を希望しない場合に、他の医師による相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでないとされています。「受けない」という選択肢ではなく、「別の医師で受けて書面を出す」という代替手段が条文に置かれている形です。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。

関連する「使い方」ページ

関連する法令コラム