パートやアルバイトを雇うとき、「週20時間を超えたら雇用保険」という言い方をよく聞きます。では、その20時間はどの条文に書かれているのか。実際に条文を開いてみると、雇用保険法に「週20時間以上の者は被保険者とする」という条文はありませんでした。20時間という数字が出てくるのは、加入する人を定めた条文ではなく、適用から外れる人を列挙した条文のほうです。
この「原則は全員、外れる人だけを書く」という建て方が分かると、実務の判断の順序も変わります。この記事では、(1)被保険者はどう定義されているか、(2)外れるのはどういう人か、(3)学生アルバイトの扱い、(4)いつまでに届け出るか、(5)届け出なかったときにどうなるか、を順に条文本体で確認します。前回扱った労災保険とは、罰則の作りがはっきり違っていました。
被保険者は「第6条各号に掲げる者以外のもの」と定義されている
出発点は雇用保険法第4条第1項です。
(定義)
第四条 この法律において「被保険者」とは、適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のものをいう。
注目したいのは定義の形です。「週○時間以上働く者」でも「○か月以上雇用される者」でもなく、「適用事業に雇用される労働者」から「第6条各号に掲げる者」を差し引いたもの、という引き算で定義されています。つまり原則は、雇われている人は被保険者。そこから外れる人だけを第6条が列挙している、という構造です。
では「適用事業」とは何か。雇用保険法第5条第1項も一行です。「この法律においては、労働者が雇用される事業を適用事業とする」。ここでも人数や業種による線引きはありません。同条第2項は、保険関係の成立と消滅については徴収法の定めによるとしており、この点は前回の労災保険と同じ枠組みです。
実務では「週20時間を超えたら加入させる」と、加入の側から条件を足していく考え方をしがちです。しかし条文は逆で、まず全員が対象、そこから外れる人を確認するという順序になっています。判断に迷ったときは、条文の順序に合わせて「この人は第6条のどの号に当たるか」と問うほうが、答えにたどり着きやすくなります。
外れるのはどういう人か(雇用保険法第6条)
雇用保険法第6条が適用除外を定めています。パート・アルバイトの判断で効いてくるのは第1号と第2号です。
(適用除外)
第六条 次に掲げる者については、この法律は、適用しない。
一 一週間の所定労働時間が二十時間未満である者(第三十七条の五第一項の規定による申出をして高年齢被保険者となる者及びこの法律を適用することとした場合において第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
二 同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者(前二月の各月において十八日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者及びこの法律を適用することとした場合において第四十三条第一項に規定する日雇労働被保険者に該当することとなる者を除く。)
ここから読み取れることが3つあります。
第一に、条文の文言は「所定労働時間」です。実際に働いた時間ではなく、雇用契約で定めた時間を指します。繁忙期にたまたま長く働いた週があったことと、所定労働時間が20時間以上であることは別の話になります。裏を返せば、契約書や労働条件通知書に週の所定労働時間をきちんと書いておくことが、そのまま判断の根拠になります。
第二に、第2号は「見込まれない者」という書き方です。結果として31日以上働いたかどうかではなく、雇い入れの時点での見込みで判断する建て方になっています。
第三に、両方の号にかっこ書きの除外が付いています。第1号では高年齢被保険者となる申出をした者と日雇労働被保険者に該当する者、第2号では前2月の各月に18日以上雇用された者と日雇労働被保険者に該当する者が、それぞれ「除く」とされています。つまり20時間未満・31日未満であっても、これらに当たれば適用除外にはなりません。「週20時間未満なら一律に対象外」と覚えてしまうと、この部分を落とします。
第6条はこのほか、第3号で季節的に雇用される者のうち厚生労働省令で定める要件に該当する者、第4号で学校の学生・生徒、第5号で漁船に乗り組むために雇用される船員(一年を通じて船員として適用事業に雇用される場合を除く)、第6号で国・都道府県・市町村等の事業に雇用される者のうち厚生労働省令で定める者を挙げています。第6号の詳細は雇用保険法施行規則第4条に置かれています。
ここまでの内容の根拠条文と出典リンクは、AI法令調査ツール「ことのり」でご自身でも確かめられます。調べたいことを日常の言葉で入力するだけです。
パート・アルバイトの雇用保険をことのりで調べる学生アルバイト:条文は「除外されない学生」のほうを列挙していた
飲食店や小売店でいちばん判断に迷うのが学生アルバイトです。雇用保険法第6条第4号はこう定めています。
四 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
肝心の中身は省令に委ねられています。その省令が雇用保険法施行規則第3条の2で、条文本体は次のとおりでした。
(法第六条第四号に規定する厚生労働省令で定める者)
第三条の二 法第六条第四号に規定する厚生労働省令で定める者は、次の各号に掲げる者以外の者とする。
一 卒業を予定している者であつて、適用事業に雇用され、卒業した後も引き続き当該事業に雇用されることとなつているもの
二 休学中の者
三 定時制の課程に在学する者
四 前三号に準ずる者として職業安定局長が定めるもの
読み方に少しコツが要ります。「次の各号に掲げる者以外の者」が適用除外になる、という二重の引き算です。言い換えると、ここに列挙されている①〜④に当たる学生は、学生であっても適用除外にならない=要件を満たせば被保険者になります。卒業後もそのまま働くことが決まっている学生、休学中の学生、定時制に通う学生がこれにあたります。
そしてここでも、列挙から漏れているものが目を引きました。条文本体に「通信制」という言葉はありません。1回目の生検索の地の文は通信制の学生に触れていましたが、根拠の省令を名指しして取得してみると、明示されていたのは定時制だけでした。通信制を扱うとすれば第4号の「職業安定局長が定めるもの」によることになりますが、その通達本体は今回取得していません。条文に書かれていることと、解説で説明されていることの境目は、この記事では分けて書いています。判断が必要な場面ではハローワークにご確認ください。
届出は「翌月10日まで」(雇用保険法施行規則第6条第1項)
届出義務そのものは雇用保険法第7条が定め、期限は省令に置かれています。雇用保険法施行規則第6条第1項の要点は次のとおりです。
(被保険者となつたことの届出)
第六条 事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者となつたことについて、当該事実のあつた日の属する月の翌月十日までに、雇用保険被保険者資格取得届(略)をその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。
労災保険の成立届が「成立した日から10日以内」だったのに対し、雇用保険の資格取得届は「翌月10日まで」です。月のどのタイミングで雇い入れたかによって、実際の猶予は10日ほどから40日ほどまで変わります。同じ「10日」でも数え方が違う点に注意してください。
期限を過ぎた場合は、同条第4項により、労働契約に係る契約書・労働者名簿・賃金台帳その他の被保険者となった事実とその年月日を証明できる書類を添付して提出することになります。遅れたら出せなくなるのではなく、事実を裏付ける書類が追加で必要になる、という建て方です。ここでも、契約書と賃金台帳をきちんと作ってあるかが効いてきます。
なお資本金等が一定額を超える特定法人については、同条により電子情報処理組織(電子申請)による提出が義務づけられています。電気通信回線の故障や災害などで使用が困難な場合は書面でも可とされています。
届出を怠ったときに効くもの:労災保険とは条文の作りが違った
前回の記事で、労災保険の保険関係成立届の未提出は、徴収法第46条が列挙する罰則の対象に含まれていなかったことを条文本体で確認しました。今回、同じ問いを雇用保険について立ててみたところ、答えは逆でした。雇用保険法第83条を引用します。
第八十三条 事業主が次の各号のいずれかに該当するときは、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
一 第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合
二 第七十三条の規定に違反した場合
三 第七十六条第一項の規定による命令に違反して報告をせず、若しくは偽りの報告をし、又は文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出した場合(略)
第1号が名指ししているのは第7条、すなわち被保険者に関する届出義務そのものです。資格取得届を出さないことは、この条文に直接あたります。労災保険では届出の不履行が罰則の列挙から外れ、費用徴収と追徴金で受け止める建て方になっていたのに対し、雇用保険は届出違反を正面から罰則の対象に置いている——同じ労働保険でも、条文の設計が異なっていました。
もう一つ、雇用保険法第4条の定義に戻っておきます。被保険者の定義に、本人の申出や同意を要件とする文言はありません。「本人が入りたくないと言っている」という理由で届出をしない扱いは、条文上の根拠を持たないことになります。
2028年10月から週10時間へ(ただし条文はまだ「二十時間」)
最後に、これから変わる点にも触れておきます。厚生労働省の資料では、雇用保険の適用拡大として週所定労働時間の基準を20時間以上から10時間以上へ引き下げ、2028年10月1日施行とされています(厚生労働省の資料)。実現すれば、現在は対象外の週10〜20時間のパート・アルバイトが新たに被保険者となります。
ただし、今回の生検索で取得できた雇用保険法第6条第1号の条文本体は、現時点では「二十時間」のままです。改正後の条文そのものは取得していません。この記事では、数字の引き下げと施行日は厚生労働省の資料に基づく情報として示し、条文の帰結としては書いていません。実際の準備に入る段階では、改正法の条文と厚生労働省の案内で最新の内容をご確認ください。
まとめ:確認する順番
条文本体で確認できた範囲を、実務で使う順に並べておきます。
- まず全員が対象——被保険者は「適用事業に雇用される労働者であつて、第6条各号に掲げる者以外のもの」(雇用保険法第4条第1項)
- 外れるのは誰か——週の所定労働時間20時間未満、または31日以上の雇用見込みがない者(第6条第1号・第2号。いずれもかっこ書きの除外あり)
- 見るのは所定労働時間——実際に働いた時間ではなく、契約で定めた時間(第6条第1号)
- 学生は一律ではない——卒業予定で継続雇用が決まっている者・休学中の者・定時制の者は適用除外にならない(施行規則第3条の2)
- いつまでに届け出るか——被保険者となった事実のあった日の属する月の翌月10日まで(施行規則第6条第1項)
- 出していなかったら——第7条違反として第83条第1号の罰則(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)の対象
具体的な様式や提出先、個別の事案の判断は、事業所の所在地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)にご確認ください。判断に迷う場合は社会保険労務士へのご相談をおすすめします。
よくある質問
Q1. パートを雇用保険に入れる基準は、結局のところ週何時間からですか?
週の所定労働時間が20時間以上であることが一つ目の条件です。ただし条文はこれを加入の要件としてではなく、適用除外として書いています。雇用保険法第6条第1号が「一週間の所定労働時間が二十時間未満である者」には法律を適用しないと定めており、その裏返しとして20時間以上なら適用される、という読み方になります。もう一つ、第6条第2号の「三十一日以上雇用されることが見込まれない者」にも当たらないことが必要です。
Q2. 実際に働いた時間が週20時間を超えた月がありました。加入が必要になりますか?
条文の文言は「所定労働時間」であり、実際に働いた時間(実労働時間)ではありません。したがって、たまたま忙しくて残業した週があっても、それだけで基準を満たすことにはならないのが条文の建て方です。ただし契約上の所定労働時間と実態が恒常的にかけ離れている場合の取扱いは、条文からは読み取れません。ハローワークまたは社会保険労務士にご確認ください。
Q3. 2か月の短期契約なら、31日以上の見込みに当たりますか?
雇用保険法第6条第2号が除外しているのは「同一の事業主の適用事業に継続して三十一日以上雇用されることが見込まれない者」です。契約期間が2か月であれば31日以上にあたります。なお同号には、前2月の各月において18日以上同一の事業主の適用事業に雇用された者などを除く、というただし書きが付いています。契約期間が31日未満であっても、更新の定めがあって結果的に31日以上になる見込みがある場合の取扱いについては、ハローワークにご確認ください。
Q4. 学生アルバイトは雇用保険に入れなくてよいのですか?
雇用保険法第6条第4号が、学校教育法第1条・第124条・第134条第1項の学校の学生または生徒であって厚生労働省令で定める者を適用除外としています。その省令が雇用保険法施行規則第3条の2で、①卒業予定で卒業後も引き続き同じ事業に雇用されることになっている者、②休学中の者、③定時制の課程に在学する者、④これらに準ずる者として職業安定局長が定めるもの、の「以外の者」が適用除外になると定めています。つまり①〜③に当たる学生は、学生であっても適用除外にはなりません。
Q5. 通信制の学生はどうなりますか?
今回取得できた雇用保険法施行規則第3条の2の条文本体には、通信制という言葉は出てきませんでした。列挙されているのは卒業予定者・休学中の者・定時制の課程に在学する者の3つと、「前三号に準ずる者として職業安定局長が定めるもの」という第4号です。通信制の学生を扱うとすれば第4号の通達によることになりますが、その通達本体は今回の生検索では取得していません。取扱いはハローワークにご確認ください。
Q6. 加入手続きはいつまでに行う必要がありますか?
雇用保険法施行規則第6条第1項が、被保険者となった事実のあった日の属する月の翌月10日までに、雇用保険被保険者資格取得届を事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならないと定めています。期限を過ぎて提出する場合は、同条第4項により、労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳その他の被保険者となった事実とその年月日を証明できる書類を添付する必要があります。
Q7. 届出をしなかった場合、罰則はありますか?
あります。雇用保険法第83条は、事業主が同条各号のいずれかに該当するときは6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金に処すると定め、その第1号に「第七条の規定に違反して届出をせず、又は偽りの届出をした場合」を挙げています。第7条が被保険者に関する届出義務の条文ですので、資格取得届を出さないことは第83条第1号に直接あたる建て方になっています。労災保険の成立届が徴収法第46条の罰則の列挙に入っていなかったのとは、条文の作りが異なります。
Q8. 本人が「入りたくない」と言っています。入れなくてもよいですか?
雇用保険法第4条第1項は、被保険者を「適用事業に雇用される労働者であつて、第六条各号に掲げる者以外のもの」と定義しています。本人の希望や申出を要件とする文言は置かれていません。加入するかどうかを当事者が選べる建て方にはなっていない、というのが条文から読み取れる構造です。第6条各号に該当しない限り、届出は事業主の義務になります。
Q9. 週20時間の基準が引き下げられると聞きました。いつからですか?
厚生労働省の資料では、週所定労働時間の基準を20時間以上から10時間以上へ引き下げる雇用保険の適用拡大について、2028年10月1日施行とされています。ただし今回の生検索では、改正後の雇用保険法第6条第1号の条文本体は取得できていません(e-Gov法令検索が表示しているのは現行の「二十時間」です)。施行日が近づいた時点で、改正法の条文と厚生労働省の案内を改めてご確認ください。
出典(一次情報)
- 🔗 雇用保険法 第4条(定義)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法 第5条(適用事業)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法 第6条(適用除外)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法 第7条(被保険者に関する届出)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法 第83条(罰則)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法施行規則 第3条の2(法第6条第4号の厚生労働省令で定める者)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法施行規則 第4条(法第6条第6号の厚生労働省令で定める者)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険法施行規則 第6条(被保険者となつたことの届出)(e-Gov法令検索)
- 🔗 雇用保険に関する業務取扱要領(厚生労働省)
- 🔗 雇用保険被保険者資格取得届の提出期限(厚生労働省)
- 🔗 労働保険対象労働者の範囲(福島労働局)
- 🔗 雇用保険制度の見直し(適用拡大・施行期日)(厚生労働省)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。