2026年10月施行の改正法により、カスタマーハラスメント(以下「カスハラ」)対策が事業主の義務として強化されます。関連ニュース「カスタマーハラスメント対策の事業主義務化(2026年10月施行)」でも、就活セクハラ対策とあわせて事業主の措置義務が強化されることが報じられています。中小企業や顧問先支援を行う士業にとって、「何をどこまで講じれば義務を果たしたといえるのか」を整理しておくことは急務です。

そこで本記事では、現行の労働契約法・労働施策総合推進法および厚生労働省の対策マニュアル等をもとに、事業主に求められる措置義務の中身を、未然防止と発生時対応に分けて整理します。条文の原文リンクも本文中に挿入していますので、自社の就業規則や相談窓口の整備状況と照らし合わせながらお読みください。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。カスハラ対策は労働者の安全衛生に関わる分野であり、業種・職場の実情によって講じるべき措置の内容や水準が異なります。実際に社内規程や相談体制を整備する際は、必ず一次情報(e-Gov掲載の条文・厚生労働省マニュアル等)に当たり、最終判断は社会保険労務士・弁護士などの専門家にご確認ください。

カスハラ対策が事業主の義務とされる法的根拠

カスハラそのものを直接定義する条文は現時点では置かれていません。実務上は、複数の既存法令を組み合わせて事業主の措置義務が導かれています。

労働契約法第5条の安全配慮義務

カスハラ対策の中心的な法的根拠は、労働契約法第5条に規定される安全配慮義務です。同条は、使用者が労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をするものと定めています。ここでいう「安全」には身体的な安全のみならず精神的な健康も含まれると解釈されており、カスハラによる精神的負荷から労働者を保護することも安全配慮義務の範囲内とされています。

労働施策総合推進法第30条の2による雇用管理上の措置

労働施策総合推進法第30条の2は、職場の優越的な関係を背景とした言動による就業環境の悪化を防止するため、事業主に対し、相談に応じ適切に対応するための体制整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを義務付けています。カスハラは顧客等からの行為であり直接の対象ではないものの、労働者の就業環境を害するという点で共通しており、対策の考え方が類推適用されるべきと整理されています。

あわせて、同法第30条の3では、国・事業主・労働者それぞれの責務が定められており、労働者にも優越的言動問題への関心と理解を深め、事業主の措置に協力する努力義務が課されています。

民法第715条の使用者責任

カスハラによって労働者が損害を被った場合、民法第715条の使用者責任が問題となる場面もあります。同条は、ある事業のために他人を使用する者は、被用者が事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負うとしており、職場環境を適切に管理しなかった場合の責任を考えるうえで関連条文となります。

カスハラの判断基準

厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを「顧客等からの、事業活動に関する要求であって、当該要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段又は態様が社会通念上不相当なものであり、当該手段又は態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義しています。

判断にあたっては、次の二つの観点を整理することが推奨されています。

  • 要求の内容の妥当性:正当なクレームか、それとも妥当性を欠く要求か
  • 要求の手段・態様の相当性:暴言、暴力、威圧的言動、執拗な言動など、社会通念上不相当な手段・態様がとられていないか

正当な意見や苦情は、真摯に受け止め改善につなげるべきものであり、カスハラとは区別する必要があります。

事業主が講じるべき措置(未然防止)

厚生労働省マニュアル等が示す未然防止措置は、大きく次の3つに整理できます。

方針の明確化と周知・啓発

  • カスハラは許されない行為であるとの方針を明確化し、就業規則等に規定する
  • 労働者に対し、カスハラに関する方針や対応内容を周知・啓発する
  • 顧客等に対しても、カスハラ行為を行わないよう協力を求めるメッセージを発信する

相談窓口の設置と対応体制の整備

  • 労働者がカスハラに関する相談・申告をできる窓口を設置する
  • 相談を受けた際の対応手順を定め、担当者を明確にする
  • 相談者のプライバシー保護や不利益取扱いの禁止を徹底する(労働施策総合推進法第30条の2の趣旨を踏まえる)

研修の実施

  • 労働者に対し、カスハラの知識、対応方法、メンタルヘルスケア等の研修を行う
  • 管理監督者に対しては、発生時の適切な対応や労働者への配慮に関する研修を強化する

事業主が講じるべき措置(発生時の対応)

実際にカスハラが発生した場合は、被害を最小限に抑え、再発を防止するための一連の対応が必要となります。

事実関係の迅速かつ正確な確認

  • 相談・申告があった場合、速やかに事実関係を聴き取り確認する
  • 関係者からの情報収集や、必要に応じて客観的な証拠の確認を行う

被害者への配慮

  • 被害を受けた労働者の心身の健康状態に配慮し、必要に応じて休業、配置転換、メンタルヘルス相談等の措置を講じる
  • 労働者の意向を尊重し、二次被害が生じないよう配慮する

行為者への対応

  • 行為の中止や謝罪を求める等の毅然とした対応を行う
  • 悪質な事案については、警察への通報、弁護士への相談、出入り禁止措置、法的措置の検討等を行う

再発防止措置

  • 発生原因を分析し、再発防止のための対策を講じる
  • 必要に応じて、業務プロセスの見直し、顧客対応マニュアルの改訂、人員配置の変更等を行う

事業主対応の限界と外部連携

カスハラには事業主単独での対応が困難なケースもあります。暴力行為や脅迫、器物損壊など犯罪行為に該当する場面では、警察への通報や弁護士への相談など外部機関との連携が不可欠です。

また、労働施策総合推進法第30条の3第4項により、労働者にも優越的言動問題への関心と理解を深め、事業主の講ずる措置に協力する努力義務が課されている点も押さえておきたいポイントです。組織的な対応として、経営層がリーダーシップを発揮し、特定の部署や担当者任せにしない体制を構築することが重要とされています。

業種別ガイドラインと記録の重要性

業種に応じて参照すべきガイドラインも整備が進んでいます。たとえば飲食業については、農林水産省が「飲食店向けカスタマーハラスメント対策ガイドライン」を策定しており、経営者や店長・責任者の役割、判断基準、予防策、取組事例などが示されています。東京都においては、「カスタマー・ハラスメント防止条例」に基づくガイドラインが公表されており、労働契約法第5条の安全配慮義務にも明示的に言及しています。

いずれの場面でも、発生時の日時、場所、内容、対応状況、被害状況などを詳細に記録することが、その後の対応や法的措置を検討するうえで欠かせません。

条文の原文も、その場で確認できます

本記事で取り上げた労働契約法・労働施策総合推進法・民法の関連条文や、厚生労働省・自治体のガイドラインは、AI法令調査ツール「ことのり」で出典付きの検索結果としてまとめて確認できます。社内規程や顧問先への説明資料を整える際にご活用ください。

カスハラ防止措置義務をことのりで調べる

よくある質問

Q1. カスハラを直接定義した法律はあるのですか?

カスハラを正面から定義する条文は現時点では置かれていません。実務上は、労働契約法第5条の安全配慮義務を中心に、労働施策総合推進法第30条の2の雇用管理上の措置義務の考え方を類推適用するかたちで、事業主の措置義務が整理されています。厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、カスハラを要求内容の妥当性と手段・態様の相当性の二つの観点から判断する定義が示されています。

Q2. 正当なクレームとカスハラはどう区別すればよいですか?

顧客からの正当な意見や苦情には真摯に対応し改善につなげる必要があります。カスハラと判断されるのは、要求の内容自体に妥当性が乏しい場合、または要求の手段・態様が社会通念上不相当な場合(暴言、暴力、威圧的言動、執拗な言動など)です。両者を区別するためには、事実関係の聴き取りと記録、要求内容と手段の双方を切り分けて検討する運用が重要です。

Q3. 小規模な事業所でも、まず何から始めればよいでしょうか?

厚生労働省マニュアル等が示す未然防止措置のうち、「カスハラは許さない」という方針の明確化と就業規則等への規定、相談窓口の設置と対応手順の明確化、労働者・管理監督者向けの研修の3点が出発点になります。あわせて、業種に応じたガイドライン(飲食業向けや東京都のガイドラインなど)も参照し、自社の実情に合わせて落とし込むことが推奨されています。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。