「うちの時給、最低賃金を下回っていないだろうか」——毎年秋に地域別最低賃金が改定されるたびに気になるところです。結論から言えば、確認の手順は①適用される地域別最低賃金の額と発効日を確認する → ②自社の賃金のうち「最低賃金に算入される部分」だけを時間額に換算する → ③両者を比べるの3ステップです。

つまずきやすいのは②です。支払っている金額の総額で比べてしまうと判断を誤ります。最低賃金法第4条(最低賃金の効力) は、時間外・休日・深夜の割増賃金や、精皆勤手当・通勤手当・家族手当などを最低賃金の計算に算入しないと定めており、これらを含めて「足りている」と考えてしまうのが典型的な落とし穴です。

もう一つ、見落とされやすいのが周知義務です。最低賃金法第8条(周知義務) は、最低賃金の概要を作業場の見やすい場所に掲示するなどの方法で労働者に周知させる措置を義務づけています。そしてこの周知義務違反には、最低賃金法第41条(罰則) により三十万円以下の罰金という罰則が定められています。金額を満たしていれば終わり、ではありません。

本記事では、e-Gov法令検索で確認できる最低賃金法の条文に基づき、この3ステップと周知義務の実務を整理します。

本記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した参考情報です。 地域別最低賃金の額は毎年改定され、都道府県ごとに異なります。具体的な金額は必ず厚生労働省および所轄の都道府県労働局の公示をご確認ください。法令の解釈・適用は個別の事情によって結論が変わることがありますので、最終判断は一次情報および社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

そもそも最低賃金を下回っていたらどうなるのか

最低賃金法第4条(最低賃金の効力)(最低賃金の効力)第1項は、使用者は最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないと定めています。

ここで重要なのは同条第2項の効果です。条文は次のように定めています。

(最低賃金の効力)
第四条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
2 最低賃金の適用を受ける労働者と使用者との間の労働契約で最低賃金額に達しない賃金を定めるものは、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、最低賃金と同様の定をしたものとみなす。

つまり、雇用契約書や労働条件通知書に「時給◯◯円」と書いて双方が合意していたとしても、その額が最低賃金を下回っていればその部分は無効になり、自動的に最低賃金額を定めたものとみなされます。「本人が同意していたから」という説明は成り立たず、差額の支払義務が残ることになります。

加えて、最低賃金法第40条(罰則) は、第4条第1項に違反した者(地域別最低賃金に係るものに限る)を五十万円以下の罰金に処すると定めています。

ステップ1:適用される額と「発効日」を確認する

地域別最低賃金は都道府県ごとに決定され、その地域で働く労働者と使用者に適用されます。額そのものは毎年改定されるため、本記事では具体的な金額は示しません。厚生労働省「最低賃金制度とは」 および所轄の都道府県労働局の公示で、最新の額をご確認ください。

実務で見落としやすいのがいつから新しい額になるのかです。最低賃金法第14条(地域別最低賃金の公示及び発効)(地域別最低賃金の公示及び発効)は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が決定した事項を公示しなければならないと定め、決定・改正は公示の日から起算して三十日を経過した日(またはその決定で別に定める日)から効力を生じるとしています。

したがって「改定が発表された日」と「実際に適用が始まる日」は別です。発表を見た時点であわてて賃金を変える必要はありませんが、発効日をカレンダーに入れて、その日以降の労働時間分から新しい額で計算できるように準備しておくのが安全です。

ステップ2:最低賃金に算入されない賃金を除く(最大の落とし穴)

ここが判断を誤りやすい部分です。最低賃金法第4条(最低賃金の効力) 第3項は、次に掲げる賃金は最低賃金額との比較に算入しないと定めています。

  • 一月を超えない期間ごとに支払われる賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金など)
  • 通常の労働時間または労働日の賃金以外の賃金で厚生労働省令で定めるもの(時間外労働・休日労働・深夜労働に対する割増賃金など)
  • 当該最低賃金において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当・通勤手当・家族手当など)

実務的な意味は明確です。残業代や通勤手当を足して「時給換算で最低賃金を超えている」と考えるのは誤りということです。比較の対象になるのは、基本給と、通常の労働時間に対して支払われる諸手当のうち算入が認められるものに限られます(厚生労働省 香川労働局「最低賃金Q&A」)。

とくに次のようなケースは、総額では足りているように見えて、算入対象だけを取り出すと下回っていることがあります。

  • 基本給は低めに設定し、通勤手当や精皆勤手当で総額を確保している
  • 残業が多く、割増賃金を含めた月額では十分な水準になっている
  • 月給制で、月の所定労働時間が長い月に時間額換算すると目減りする

月給制の場合は、月額の賃金(算入対象のみ)を1か月平均所定労働時間で割って時間額に換算し、地域別最低賃金の時間額と比べます。所定労働時間の設定を変えた場合は、時間額換算の結果も変わる点に注意してください。

ステップ3:忘れられがちな「周知義務」——ここに罰則があります

金額を満たしていても、それだけでは義務を果たしたことになりません。最低賃金法第8条(周知義務)(周知義務)は次のように定めています。

(周知義務)
第八条 最低賃金の適用を受ける使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該最低賃金の概要を、常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で、労働者に周知させるための措置をとらなければならない。

何を周知するのか

周知すべき「概要」の中身は、最低賃金法施行規則第6条 が具体的に定めています。

  • 適用を受ける労働者の範囲、およびこれらの労働者に係る最低賃金額
  • 最低賃金法第4条第3項第3号の賃金(=最低賃金に算入しない賃金
  • 効力発生年月日

3つ目まで含めて示す必要がある点に注意してください。額だけを貼っておけばよいわけではなく、いつから適用される額なのか、どの賃金が算入されないのかまでが周知の対象です。

どう周知するのか

最低賃金法第8条(周知義務) は方法を「常時作業場の見やすい場所に掲示し、又はその他の方法で」と定めています。したがって、次のような方法が考えられます(厚生労働省 香川労働局「最低賃金Q&A」)。

  • 事業場内の見やすい場所への掲示
  • 労働者への書面交付
  • 社内ネットワーク(イントラネット)への掲載

要は、労働者がいつでも最低賃金の概要を確認できる状態にしてあるかが要点です。掲示物が備品の陰に隠れている、更新されず古い額のままになっている、といった状態では実質的に周知になりません。改定のたびに掲示を差し替える運用にしておくのが確実です。

周知義務違反には三十万円以下の罰金が定められている

周知義務は「努力義務」と受け取られることがありますが、条文上はそうではありません。最低賃金法第41条(罰則) は次のとおり定めています。

第四十一条 次の各号の一に該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第八条の規定に違反した者(地域別最低賃金及び船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る。)
二 第二十九条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三 第三十二条第一項の規定による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をした者

第1号に第8条が明記されているとおり、地域別最低賃金に係る周知義務違反は三十万円以下の罰金の対象です。実際の運用としては、まず労働基準監督署による行政指導が行われるのが通常ですが、条文上の位置づけとしては罰則付きの義務であることを押さえておいてください。

さらに 最低賃金法第42条(両罰規定) は両罰規定を置いています。法人の代表者や従業員が法人の業務に関して第41条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、法人に対しても罰金刑を科すという内容です。担当者個人の問題として処理される話ではなく、法人としての体制整備が求められることになります。

実務チェックリスト

以上を、毎年の改定時に確認する形に整理すると次のようになります。

なお、最低賃金には減額の特例など個別の制度も存在します。該当しそうな場合は 厚生労働省の最低賃金に関するFAQ を確認のうえ、所轄の労働局へ照会してください。

条文の位置づけも、その場で確認できます

AI法令調査ツール「ことのり」なら、調べたいことを日常の言葉で入力するだけで、最低賃金法第4条や第41条のような根拠条文と出典リンク付きのレポートを数十秒で生成できます。

最低賃金の義務をことのりで調べる

よくある質問

Q1. 通勤手当を含めれば最低賃金を超えています。これで問題ありませんか?

最低賃金法第4条(最低賃金の効力) 第3項は、当該最低賃金において算入しないことを定める賃金(通勤手当・精皆勤手当・家族手当などが挙げられています)を最低賃金額との比較に算入しないと定めています。したがって、通勤手当を含めて超えているという計算では確認になりません。算入対象となる賃金のみを時間額に換算して比べてください。個別の手当が算入対象かどうかの判断は、厚生労働省 香川労働局「最低賃金Q&A」 を確認のうえ所轄の労働局にご照会ください。

Q2. 本人が「この時給でよい」と同意していれば大丈夫ですか?

いいえ。最低賃金法第4条(最低賃金の効力) 第2項は、最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約はその部分について無効とし、無効となった部分は最低賃金と同様の定めをしたものとみなすと定めています。合意の有無にかかわらず最低賃金額が適用されることになります。

Q3. 改定が発表されたら、すぐに新しい額で払う必要がありますか?

最低賃金法第14条(地域別最低賃金の公示及び発効) は、地域別最低賃金の決定・改正は公示の日から起算して三十日を経過した日(またはその決定で別に定める日)から効力を生じると定めています。発表日ではなく発効日から適用されますので、発効日を確認して準備してください。

Q4. 最低賃金額を掲示していないと罰則がありますか?

はい。最低賃金法第8条(周知義務) の周知義務違反は、最低賃金法第41条(罰則) 第1号により三十万円以下の罰金の対象と明記されています(地域別最低賃金および船員に適用される特定最低賃金に係るものに限る)。また 最低賃金法第42条(両罰規定) の両罰規定により、行為者に加えて法人に対しても罰金刑が科される場合があります。周知すべき内容は 最低賃金法施行規則第6条 のとおり、労働者の範囲と最低賃金額、算入しない賃金、効力発生年月日です。

出典(一次情報)

※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。

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