結論:令和5年度 司法書士試験 午後の部 第17問(不動産登記法(所有権の保存の登記))で、ことのりは5記述のうち公式正解と一致したのは2記述で、記述ア・エ・オを取りこぼしました。導かれる組合せも公式正解「アオ」に至れず、シリーズ最大の外し回となりました。本シリーズの「外した回」です。うまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開します。

本記事は、AI法令検索「ことのり」(本番稼働中のサービスそのもの)に実際に検索を実行させた結果(関連条文・出典リンク付き)をもとに編集した検証記録です。試験問題および正解は、法務省が公表する司法書士試験の問題・正解から引用しています。本記事は特定の試験対策・法的助言を目的とするものではありません。実際の判断にあたっては、必ず最新の条文や一次情報、必要に応じて専門家にご確認ください。

検証の方法

第17問は、不動産登記法(所有権の保存の登記)に関するアからオまでの5つの記述のうち「正しいものの組合せ」を選ぶ問題です。方法はシリーズ共通で、各記述を1つずつ、「次の記述は、現行法令に照らして正しいですか、誤っていますか。根拠となる条文を挙げて判定してください」という形で本番稼働中のことのりにそのまま入力し、返ってきた判定を法務省公表の正解と照合しました。プロンプトの工夫・再試行・人間による誘導はありません。

ことのりの判定結果:5記述中2記述が一致(記述ア・エ・オを取りこぼし)

記述ことのりの判定挙げた主な根拠条文公式正解との照合
記述ア正しい不動産登記法74条1項2号× 不一致
記述イ誤り不動産登記法74条1項1号○ 一致
記述ウ誤り不動産登記法74条1項2号○ 一致
記述エ誤り不動産登記法74条2項× 不一致
記述オ正しい不動産登記法74条1項1号× 不一致

各記述の解説

記述ア:ことのりの判定「正しい」(公式と不一致)

記述:権利能力なき社団の旧代表者Aが表題部所有者として記録されている不動産について、社団から不動産を買い受けたBは、Aの唯一の相続人Cを被告として所有権確認の確定判決を得て、Bを名義人とする所有権保存登記を申請することができる。

根拠条文:不動産登記法74条1項2号
ことのりは『Bは社団を登記義務者とする所有権移転登記を申請すべき』と解し『誤り』と結論しましたが、公式正解は『正しい』です。権利能力なき社団は登記名義人になれないため、社団の名で登記された旧代表者名義の不動産を買い受けた者は、旧代表者の相続人を被告として所有権確認の確定判決を得ることで、法74条1項2号『所有権を有することが確定判決によって確認された者』として、直接自己名義の保存登記を申請できるとするのが登記先例・判例の運用です。

記述イ:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:Aが表題部所有者として記録されている甲建物について、Aが死亡し、Aの相続人がB及びCである場合には、Bは、単独で、自己の相続分についてのみ相続による所有権の保存の登記を申請することができる。

根拠条文:不動産登記法74条1項1号
所有権保存登記は不動産全体の所有権を公示するものであり、共同相続人の一人が申請する場合でも、全員の持分を含む形で保存登記されます。自己の相続分についてのみ保存登記することはできません。ことのりは『誤り』と判定し、公式正解と一致しました。

記述ウ:ことのりの判定「誤り」(公式と一致)

記述:表題部所有者がA・Bの甲建物をCが買い受けた場合において、CがAを被告として所有権確認の確定判決を得たときは、Cは自己名義の所有権保存登記を申請することができる。

根拠条文:不動産登記法74条1項2号
共有不動産の一部の共有者のみを被告として得た所有権確認判決では、不動産全体の所有権が申請人に帰属することが確定したとは認められません。表題部所有者全員を被告とする判決が必要です。ことのりは『誤り』と判定し、公式正解と一致しました。

記述エ:ことのりの判定「誤り」(公式と不一致)

記述:敷地権付き区分建物の表題部所有者Aが区分建物をBに売却し抵当権設定契約を締結した場合、Bが法74条2項の保存登記をしないときは、Aは抵当権設定登記請求権を代位原因として、B名義の保存登記を代位申請することができる。

根拠条文:不動産登記法74条2項
ことのりは民法423条の債権者代位権の一般原則から『代位申請できる』と判定し『正しい』と結論しましたが、公式正解は『誤り』です。法74条2項による保存登記は区分建物の譲受人自身の申請権に基づくもので、譲渡人Aが自己の抵当権設定登記請求権を保全するためにこれを代位で行使することは登記先例上認められていません。ことのりは条文と民法の一般原則から筋の通った推論を組み立てましたが、登記先例の運用を捉えきれませんでした。

記述オ:ことのりの判定「正しい」(公式と不一致)

記述:Aを表題部所有者とする甲建物について、Aが生前に相続人以外のBに売却していた場合、Aの相続人Cは、Aを所有権の登記名義人とする所有権の保存の登記を申請することができる。

根拠条文:不動産登記法74条1項1号
ことのりは『実体上の所有者はBなのでCは申請権を有しない』と判定し『誤り』と結論しましたが、公式正解は『正しい』です。法74条1項1号は表題部所有者の相続人その他一般承継人に保存登記の申請権を認めており、生前の売却があってもこの申請権は失われません。実務上は、まずCがA名義で保存登記をした後にBへの所有権移転登記をする二段階の方法が認められています。ことのりは実体法上の所有権と登記手続上の申請権を切り分ける点を捉えきれませんでした。

この結果から言えること

  • ことのりが外した記述ア・エ・オはいずれも条文のみでは決着せず、登記先例で運用される論点でした。ア(権利能力なき社団からの譲受人の保存登記)・エ(法74条2項の保存登記への代位可否)・オ(表題部所有者の相続人による名義保存登記の可否)は、いずれも実務通達・登記研究で確立されている取扱いに従う必要があります。
  • ことのりは条文の文言と民法の一般原則から筋の通った推論を組み立てましたが、登記先例で定まった別の運用がある論点では、AIの一般論的な推論が公式解と正反対の結論を出しやすいことが示されました。3つも取りこぼしたのは、条文の文言解釈だけでは登記実務の運用を追いきれないことを表しています。
  • 教訓は明確です。登記手続の論点では、条文だけでなく登記先例・登記研究の運用を必ず確認してください。ことのりは条文の所在を素早く教えてくれる有能な相棒ですが、条文にない登記実務の運用まで責任を持つのは無理です。本記事はうまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開するシリーズ方針に沿うものです。

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よくある質問

AIは登記先例に対応できていますか?

ことのりは条文・法令データを網羅していますが、登記先例(民事局通達・登記研究)はその外にあり、AIが常に正確に取り込めているとは限りません。本検証でも、条文の一般論で公式先例と逆の結論を出した例が3つ出ました。実務判断では、必ず登記先例・登記研究で最終確認をしてください。

所有権の保存の登記はなぜ論点が多いのですか?

所有権保存登記は未登記不動産に初めてされる登記で、申請権者・添付情報・敷地権付き区分建物の特則など、条文と先例の組み合わせで多くの論点が生じます。試験・実務いずれでも頻出です。最終確認は条文と登記先例で行ってください。

出典(一次情報)

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