結論:令和6年度 司法書士試験 午後の部 第18問(不動産登記法(登記名義人の名称又は住所の変更の登記))で、ことのりは5記述のうち公式正解と一致したのは3記述で、記述ウ(特例有限会社の株式会社移行時の登記原因)と記述エ(和解調書の住所併記による前提登記の省略)を取りこぼしました。ことのりはウ・エを『正しい』と判定した結果、公式正解の組合せ「ウエ」(=誤っている記述)に絞り込めませんでした。本シリーズの「外した回」です。うまくいった回だけでなく、外した回も隠さず公開します。
検証の方法
第18問は、不動産登記法(登記名義人の名称又は住所の変更の登記)に関するアからオまでの5つの記述のうち「誤っているものの組合せ」を選ぶ問題です。方法はシリーズ共通で、各記述を1つずつ、「次の記述は、現行法令に照らして正しいですか、誤っていますか。根拠となる条文を挙げて判定してください」という形で本番稼働中のことのりにそのまま入力し、返ってきた判定を法務省公表の正解と照合しました。プロンプトの工夫・再試行・人間による誘導はありません。
ことのりの判定結果:5記述中3記述が一致(記述ウ・エを取りこぼし)
| 記述 | ことのりの判定 | 挙げた主な根拠条文 | 公式正解との照合 |
|---|---|---|---|
| 記述ア | 正しい | 不動産登記法25条7号 | ○ 一致 |
| 記述イ | 正しい | 不動産登記法64条1項 | ○ 一致 |
| 記述ウ | 誤り | 会社法整備法45条 | × 不一致 |
| 記述エ | 誤り | 不動産登記法25条7号 | × 不一致 |
| 記述オ | 正しい | 不動産登記法25条7号 | ○ 一致 |
各記述の解説
記述ア:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)
記述:所有権登記名義人が地上権の設定の登記の抹消の申請をする場合、住所の変更により現住所と登記記録上の住所が異なるときは、当該申請の前提として所有権登記名義人の住所変更登記を申請しなければならない。
根拠条文:不動産登記法25条7号
登記名義人の同一性を確保するため、抹消登記の申請人として登場する場合も前提として住所変更登記が必要です(法25条7号)。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。
記述イ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)
記述:仮差押えの登記後、本執行に移行してされる強制競売の申立て前に仮差押債権者Aの住所変更があった場合、Aは当該不動産の仮差押債権者の住所変更登記を申請することができる。
根拠条文:不動産登記法64条1項
仮差押債権者も登記名義人(仮差押えの登記名義人)に相当し、その住所変更登記は法64条1項により単独で申請することができます。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。
記述ウ:ことのりの判定「誤り」(公式と不一致)
記述:甲不動産の所有権登記名義人である特例有限会社が株式会社へ移行した場合、甲不動産についてする所有権登記名義人の名称変更登記の登記原因は、組織変更である。
根拠条文:会社法整備法45条
ことのりは『特例有限会社の株式会社移行は組織変更にあたる』とする一般理解から『正しい』と判定しましたが、公式正解は『誤り』です。特例有限会社の株式会社移行は、会社法整備法45条による定款変更(商号中に『株式会社』を含める)で行われるもので、会社法上の組織変更(株式会社⇔持分会社)とは制度が別です。したがって不動産登記の登記原因は『商号変更』となります(登記先例:平成18年3月29日民二755号通達)。ことのりは会社法上の組織変更概念と混同しました。
記述エ:ことのりの判定「誤り」(公式と不一致)
記述:A→Bの所有権移転登記手続をする旨の和解調書の正本を提供してA→Bの所有権移転登記を申請する場合において、Aの現住所と登記記録上の住所が異なるときであっても、和解調書の当事者の表示にAの変更後の住所と登記記録上の住所が併記されているときは、Bは当該申請の前提としてAの住所変更登記を申請することを要しない。
根拠条文:不動産登記法25条7号
ことのりは『和解調書に住所併記があれば同一性が確認できるため前提の住所変更登記は不要』とする筋の通った推論で『正しい』と判定しましたが、公式正解は『誤り』です。判決による登記(和解調書を含む)であっても、登記記録上の住所と申請時の住所が異なる場合は、登記名義人の同一性を確保するために前提として住所変更登記を経る必要があります(法25条7号、登記先例:昭和43年5月7日民甲1260号)。和解調書に住所が併記されていても、この前提要件は免除されません。
記述オ:ことのりの判定「正しい」(公式と一致)
記述:Aの破産管財人Bが甲土地を任意売却し所有権移転登記を申請する場合、住所の変更によりAの現住所と登記記録上の住所が異なるときは、Bは当該申請の前提としてAの住所変更登記を申請しなければならない。
根拠条文:不動産登記法25条7号
破産管財人による任意売却の場合も、登記義務者Aの同一性確保のため前提として住所変更登記が必要です。ことのりは『正しい』と判定し、公式正解と一致しました。
この結果から言えること
- ことのりが外した記述ウは、『特例有限会社の株式会社移行』と『会社法上の組織変更』の区別という、会社法と不動産登記実務にまたがるピンポイントの論点でした。前者は会社法整備法45条による定款変更(商号変更)であり、後者(株式会社⇔持分会社の組織変更)とは別制度です。ことのりは日常語感の『組織変更』と、会社法上の技術用語の『組織変更』を切り分けきれませんでした。
- 記述エでは、和解調書に住所併記があれば同一性が担保されるからという筋の通った推論で結論を出しましたが、判決による登記でも前提として住所変更登記が必要という登記先例を捉えきれませんでした。実体面で同一性が確認できても、登記記録の連続性を維持する形式要件は別に働くという点が外れた原因です。
- 教訓は明確です。登記原因の呼び方や前提登記の省略可否は、条文と登記先例が細かく決めており、実体的な同一性判断だけで結論を出してはいけないこと。AIは筋の通った説明を組み立てますが、実務先例による限定要件を必ず一次情報で確認してください。
シリーズ累計成績(随時更新)
司法書士試験(不動産登記法など)の条文知識を問う問題で同じ検証を進めています。うまくいった回だけを選んで載せることはせず、外した問題も隠さず解剖して公開します。
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AIは会社法と登記実務の細かい違いを判断できますか?
本検証では、日常語感の『組織変更』と、会社法上の技術用語の『組織変更』を切り分けきれず、特例有限会社の株式会社移行の登記原因を誤りました。会社法と登記実務にまたがる論点では、AIの判定に頼りきらず、必ず条文(会社法整備法など)と登記先例で最終確認してください。
和解調書による登記でも前提の住所変更登記は必要ですか?
和解調書に住所併記があっても、登記記録上の住所と申請時の住所が異なる場合は、前提として住所変更登記を経る必要があります(登記先例:昭和43年5月7日民甲1260号)。登記記録の連続性を保つ形式要件は、実体的な同一性の確認とは別に働くためです。最終確認は登記先例で行ってください。