外国人を雇う事業者がまず押さえるべき義務は2つあります。ひとつは雇い入れる前に就労できる在留資格かどうかを確認すること、もうひとつは雇入れ・離職をハローワーク(厚生労働大臣)へ届け出ることです。後者は労働施策総合推進法第28条第1項に明記された義務で、怠れば同法第50条により30万円以下の罰金。確認を怠って不法就労者を雇った場合は、入管法第73条の2の不法就労助長罪として3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)の対象になります。
きっかけは、入管難民法改正で在留手続きの手数料が大幅に引き上げられ、永住許可申請は従来の約20倍になったという報道です。浜松市の窓口では引き上げ前の駆け込み申請で混雑が生じたと伝えられています。手続きの費用負担が変われば、外国人を雇う中小企業や手続きを代理する士業の実務にも影響します。そこで、その土台にある「事業者側の義務」そのものを、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に条文を引いて整理しました。この記事では、確認すべき事項、届出の期限と届出事項、そして罰則の範囲が分かります。
1. 全体像:2つの義務と1つの罰則規定
外国人雇用における事業者の主な法的義務は、次の2つに整理できます。
- 在留資格の確認義務……雇用する外国人が日本で就労可能な在留資格を有しているかを確認する、実質的な義務です。直接的な条文で明記されているわけではありませんが、不法就労助長罪の適用を避けるうえで不可欠な措置になります。
- 外国人雇用状況の届出義務……外国人を雇い入れた場合や離職した場合に、その情報を厚生労働大臣(ハローワーク)に届け出る義務です。労働施策総合推進法第28条に明確に定められています。
これらの義務を怠り、不法に就労する外国人を雇用した場合、事業主は入管法第73条の2に定める不法就労助長罪に問われる可能性があります。
2. 在留資格の確認義務:条文はないが、実質的に求められる
入管法には、事業主に対して直接的に「在留資格の確認義務」を明記した条文は存在しません。しかし、不法就労助長罪の規定により、実質的にこの確認が求められます。
なぜ確認が必要なのか
入管法第73条の2の不法就労助長罪は、事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者等を処罰するものです。この「不法就労活動」には、在留資格に応じた活動に属さない収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動、または許可なく活動を行うことなどが含まれます。
そして事業主が外国人の在留資格や就労の可否を知らずに雇用した場合でも、過失がなければ処罰を免れることはできないとされています(同条第2項)。つまり「知らなかった」では済まないため、雇用前の確認が事実上の防衛線になります。
確認すべき主な事項
- 在留カードの確認……在留カードには、氏名、生年月日、国籍・地域、在留資格、在留期間、就労制限の有無などが記載されています。特に「就労制限の有無」の欄を確認し、就労が認められている在留資格であるか、またその在留資格でどのような活動が認められているかを確認することが重要です。
- パスポートの確認……在留カードと併せてパスポートも確認し、本人確認を行うとともに、在留カードの記載内容と相違がないかを確認します。
- 資格外活動許可の有無……留学や家族滞在などの在留資格を持つ外国人がアルバイトなどで働く場合、原則として「資格外活動許可」が必要です。この許可を受けているか、また許可された活動内容や時間制限を超えていないかを確認する必要があります。
- 在留期間の確認……在留期間が過ぎていないか、または雇用期間中に在留期間が満了しないかを確認します。期間が満了する場合は、更新手続きの状況を確認することが望ましいです。
3. 外国人雇用状況の届出義務:翌月10日まで
法的根拠
届出義務は労働施策総合推進法第28条第1項に定められています。届出事項の詳細は、同法に基づく同法施行規則第10条に規定されています。
対象者と時期
対象となるのは、新たに外国人を雇い入れた事業主、または雇用する外国人が離職した事業主です。ただし国または地方公共団体については、この届出義務は適用されず、政令で定めるところにより厚生労働大臣に通知することとされています(同法第28条)。
時期は、雇入れの場合は雇入れの日の属する月の翌月の10日まで、離職の場合は離職の日の属する月の翌月の10日までです(施行規則第10条第2項・第3項・第4項の規定により、雇用保険の届出と併せて行う場合はその期限に準じます)。
届出事項
施行規則第10条第1項により、届出事項は次のとおりです。
- 雇入れの場合……生年月日、性別、国籍、資格外活動の許可の有無、在留カードの番号(中長期在留者の場合)、特定技能の特定産業分野(特定技能の場合)、特定活動の活動内容(特定活動の場合)、報酬活動許可者の区分、住所、雇入れに係る事業所の名称及び所在地、賃金その他の雇用状況に関する事項
- 離職の場合……生年月日、性別、国籍、在留カードの番号(中長期在留者の場合)、特定技能の特定産業分野(特定技能の場合)、特定活動の活動内容(特定活動の場合)、報酬活動許可者の区分、住所、離職に係る事業所の名称及び所在地
なお、雇用保険の被保険者である外国人については、雇用保険の届出と併せて行うことで、一部の事項の届出が省略される場合があります。
届出方法
原則として、ハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出して行います。雇用保険の被保険者である外国人については、雇用保険被保険者資格取得届や喪失届の備考欄に必要事項を記載することで、外国人雇用状況届出を兼ねることができます(施行規則第10条)。
届出を怠った場合の罰則
第28条第1項の規定による届出をせず、または虚偽の届出をした場合、事業主は30万円以下の罰金に処せられます(同法第50条)。法人の代表者や従業員が違反行為をした場合は、行為者を罰するほか、法人に対しても罰金が科せられます(両罰規定)。
4. 不法就労助長罪の要件と罰則
法的根拠と要件
不法就労助長罪は入管法第73条の2に規定されています。同条第1項の要件は次の3つです。
- 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者……事業主が、その事業活動において、外国人に不法な就労活動を行わせた場合です。
- 外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者……不法就労を目的として外国人を管理下に置いた場合です。
- 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者……不法就労のあっせんを業として行った場合です。
ここでいう「不法就労活動」とは、入管法第70条第1項各号に掲げられるような、不法入国者、不法残留者、在留資格取消者、資格外活動許可を得ずに収入を伴う活動を行う者などが、その在留資格に応じた活動に属さない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことを指します。
罰則
不法就労助長罪に該当する者は、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科すると定められています(入管法第73条の2)。
「知らなかった」場合の扱い
入管法第73条の2第2項は、不法就労助長行為をした者が、当該外国人の活動が不法就労活動であることなどを「知らなかった」ことを理由として処罰を免れることができないと規定しています。ただし「過失のないとき」はこの限りではないとされており、事業主が在留資格の確認を適切に行うなど、不法就労を防止するための相当な注意を払っていた場合には、処罰を免れる可能性があります。もっとも、この「過失がない」と認められるハードルは高いとされ、雇用前の厳格な確認が求められます。
5. 実務上の留意点
義務違反のリスク
在留資格の確認義務や届出義務を怠ると、事業主は不法就労助長罪による刑事罰や、外国人雇用状況届出義務違反による罰金に処される可能性があります。加えて、企業イメージの失墜や、行政指導、事業停止命令などの行政処分を受けるリスクも伴います。
確認は「入口」だけで終わらない
事業主は、外国人を雇用するにあたり、単に在留資格を確認するだけでなく、雇用後も在留期間の管理、在留資格変更の必要性の確認、資格外活動許可の状況把握など、継続的な雇用管理を行うことが重要です。これにより、意図せず不法就労状態を発生させてしまうリスクを低減できます。冒頭の報道のように在留手続きの費用負担が変わる局面では、更新手続きの進捗を早めに把握しておくことが、結果として自社のリスク管理にもつながります。
労働関係法令も日本人と同様に適用される
外国人雇用においても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法など、日本人労働者と同様に日本の労働関係法令が適用されます。これらの法令遵守も当然に求められます。
条文の原文も、その場で確認できます
この記事は、AI法令調査ツール「ことのり」で実際に検索した結果をもとに編集しています。同じ質問をそのまま投げれば、e-Govの条文リンク付きで回答が返ります。自社のケースに合わせて「資格外活動許可」「特定技能」などで条件を変えて調べ直すこともできます。
外国人雇用の義務をことのりで調べるよくある質問
在留資格の確認義務は、法律の条文に書かれているのですか。
入管法には、事業主に対して直接的に「在留資格の確認義務」を明記した条文は存在しません。ただし入管法第73条の2の不法就労助長罪の規定により、実質的に確認が求められます。同条第2項では「知らなかった」ことを理由に処罰を免れることはできないとされており、過失がない場合を除いて責任を問われうるため、雇用前に在留カード等で就労の可否を確認することが不可欠な実質的義務になります。
届出を忘れてしまった場合、どのような罰則がありますか。
労働施策総合推進法第28条第1項の規定による届出をせず、または虚偽の届出をした場合、同法第50条により30万円以下の罰金に処せられます。また両罰規定があり、法人の代表者や従業員が違反行為をした場合は、行為者を罰するほか、法人に対しても罰金が科せられます。具体的な取扱いは管轄のハローワークにご確認ください。
雇用保険の手続きをすれば、外国人雇用状況の届出は別に出さなくてよいのですか。
雇用保険の被保険者である外国人については、雇用保険被保険者資格取得届や喪失届の備考欄に必要事項を記載することで、外国人雇用状況届出を兼ねることができます(労働施策総合推進法施行規則第10条)。また雇用保険の届出と併せて行うことで、一部の事項の届出が省略される場合があります。一方、雇用保険の被保険者でない場合は、原則としてハローワークに「外国人雇用状況届出書」を提出します。
出典(一次情報)
※本記事はAIによる調査支援を活用して作成した参考情報です。制度の詳細や最新の取扱いは、必ず一次情報および専門家にご確認ください。